戦略と聞くと、戦争を想起される方も少なくないと思います。
確かに戦争などの軍事戦略が当たり前のようにビジネス戦略として応用されています。
しかし軍事戦略をビジネス戦略に応用する際、実は重要な点が無視されています。
それは、ビジネスは勝ち負けではなく競合他社との共存も可能であるという点です。
この点をビジネス戦略の大家であるマイケル・ポーターは、
「競争の戦略」の中で指摘しています。
私もこの点は同意します。
孫子の兵法ではこの点を考慮されています。
もちろん局所的な戦いにおいては、軍事戦略が有効な場合もあります。
その際たる例はランチェスター戦略やOODAモデルですね。
ランチェスター戦略は以前取り上げました。
ではビジネス戦略と、戦闘行為を中心とした軍事戦略との違いは何でしょうか。
軍事戦略であれば勝つこと、つまり相手の戦力を無に帰して
降伏させることが目的となります。
そのため、「何を”するのか”を決めること」が重要になります。
例えば相手の大将の首を取ることなど、
相手がこれ以上戦えないと思う状況を作ることですね。
一方でビジネス戦略の場合は、一時的に勝つことではなく、
「生き残ること」が目的となります。
そのための戦略として先のマイケル・ポーターは、
「戦略とは何を”しないか”を決めること」と定義しています。
誰を対象とせず、何を売らないのか、いくらでは売らないのか。
そうすることによって初めて、誰を対象に、何を売るのか、いくらで売るのかが見えてきます。
差別化やコストリーダーシップ、バリューチェーンなどの発想です。
同じことを言っているようにも聞こえますが、事を進める上でこの違いが如実に表れます。
これをビジネス用語で「選択と集中」と言いますね。
選択と集中の力については「エッセンシャル思考」という書籍を
ご一読いただければと思います。
もの、サービス、対象、価格、仕組み。
生き残るとはあらゆるものを差別化するという事です。
「記憶に残る幕の内弁当はない。」(秋元康)
参考資料:
マイケル・E・ポーター:競争戦略論Ⅰ・Ⅱ.ダイヤモンド社.2018
ジョアンマグレッタ:マイケル・ポーターの競争戦略.早川書房.2012
許 成準:孫子の兵法.彩図社.2017
グレッグ・マキューン:エッセンシャル思考.かんき出版.2014