腹部や胸部の侵襲が大きい手術を受ける場合,術前の身体機能が術後合併症に影響を与えることが報告されています(こちら).
大規模手術前のプレハビリテーションの有効性を示す報告もありますが,その効果はまだ明確にはなっていません.
今回紹介する論文は「胸復部手術のプレハビリテーションは効果あるの?」という疑問に応えてくれる論文です(こちら).
2019年にイギリスのKamarajahらの研究チームは,データベースに登録されている論文61本を解析しています.
結果として,
- 術後合併症全体では,腹部手術では術後合併症を減少させたが(OR:0.61),胸部手術では減少させなかった.
- 肺合併症は,腹部手術(OR:0.41),胸部手術(OR:0.34)ともに術後合併症を減少させた.
- 心臓合併症は,腹部手術では術後合併症を減少させたが(OR:0.46),胸部手術では減少させなかった.
- 手術部位感染,術後死亡率,在院日数は,プレハビリテーションの有無で差は認められなかった.
だそうです.
ただし,研究の条件や方法にバラつきがあるため,さらなる研究が必要だそうです.
結果をまとめますと,
- プレハビリテーションは腹部手術ではすべての合併症を減少させますが,胸部手術は肺合併症のみ減少させる.
ということになります.
腹部手術の方が,プレハビリテーションの効果が出やすいというのは興味深いですね.
また,手術部位感染や術後死亡率,在院日数には影響しないというのも考えさせられますね.
今後は病態や手術内容など,プレハビリテーションが効果的な対象者を明らかになることを期待しています.