脳卒中患者では、約60%が感覚障害を有すると言われています。
感覚障害に対して、感覚機能に対するトレーニングを行っている方は多くいらっしゃると思います。
2009年にオーストラリアのSchabrunらが行ったシステマティックレビューでは、受動的な感覚トレーニングが手の機能回復に有効と報告されています(こちら)
しかし、下肢機能に対しての感覚トレーニングの有効性については不明でした。
今回紹介する論文は、「脳卒中患者の下肢機能に感覚トレーニングは有効か?」という疑問に応えてくれる論文です(こちら)。
2019年にオーストラリアのChiaらの研究チームが、2019年1月までに登録されている、脳卒中後の下肢の体性感覚に対してトレーニングを行っている16の論文、430人の参加者のデータを解析しています。
結果として、
- 体性感覚機能とバランス能力に対して、体性感覚トレーニングは効果的だった。
- 歩行機能に対しては効果的ではなかった。
だそうです。
ただし、対象者数が少ないこと、介入やアウトカムにバラつきがあることから、さらなる研究が必要と述べられています。
結果をまとめますと、
- 脳卒中後の感覚障害に対する体性感覚トレーニングは、体性感覚機能やバランス能力を改善させるが、歩行能力には効果がない
ということになります。
歩行は体性感覚能力以外にも、多数の因子が関係するので、今回の結果もある意味当然かもしれません。
しかし、バランス能力の改善には効果があるので、歩行以外のADL・IADL場面を考えれば、歩行に効果がないからといって体性感覚トレーニングを疎かにすることがないようにする必要があると思います。