低栄養は、病気になりやすくなったり、死亡率が上がったりと、個人的にも社会的にも大きな問題となります。
低栄養になってしまう原因には、様々な要因が考えられています。
ベルギーの研究チームが2000年から2015年までの期間に登録された6件の論文を解析し、低栄養の危険因子を調査しています(こちら)。
その結果、
- 年齢
- フレイル
- 多剤併用
- 身体機能低下
- パーキンソン病
- 自己申告の健康状態低下
- 認知機能低下
- 食事に介助が必要
- 興味の喪失
- 食欲不振
- 摂食嚥下障害
が危険因子であったと報告しています。
しかし、これまでの研究では、調査期間が限定的であったり、対象者の属性が偏っていたりと課題がありました。
今回紹介しる論文は、これらの課題を考慮し、「高齢者の低栄養の危険因子って何?」という疑問に応えてくれるシステマティックレビュー論文です(こちら)。
アイルランドのリメリック大学のO’Keeffeらは、2017年までに登録されている論文23件を抽出し、解析しています。
結果として、
決定因子(中等度レベル)
- 入院
- 食事介助が必要
- 自己認識の健康度が低い
- 身体機能が低い
- 食欲がない
決定因子(低レベル)
- 生活の中で興味を持つことがなくなった。
- 食事や車を利用する手段がない
- 調整された食形態
決定因子ではない(中等度レベル)
- 咀嚼能力
- 口腔内の痛み
- 歯肉異常
- 視覚・聴覚異常
- 喫煙
- アルコール消費量
- 身体活動レベル
- 味覚異常
- 特定の食品摂取
決定因子ではない(低レベル)
- 心理的苦痛
- 不安
- 孤独
- 交通アクセス
- 幸福感
- 空腹感
- 口渇感
だそうです。
ただし、評価指標や対象者にバラつきがあるため、さらなる研究が必要であるそうです。
結果をまとめますと、
- 病気をせずに、地域で元気よく生活することで、低栄養は予防できる。
- 視覚・聴覚・味覚といった感覚機能や口腔機能は、あまり低栄養とは関係してないかもしれない
ということです。
決定因子ではない項目に、意外な因子が含まれていたので驚きました。
しかし、あくまで統計上の結果なので、個人が抱えている問題点を一つ一つ丁寧に考えていく必要があると思います。
決定因子には、フレイル関連の因子が多いので、やはりフレイル対策が重要と言えるのではないかと思います。