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脳卒中患者のバランス障害に何が有効なの?というお話し

脳卒中患者のADL能力に関係している因子として、バランス能力が挙げられると思います。

 

2016年にアメリカ心臓協会とアメリカ脳卒中協会が出したガイドラインでは、バランス障害に対して、バランストレーニングを行うことが推奨されています(こちら)。

 

しかし、どんなトレーニングがバランス障害に有効かについては明らかになっていませんでした。

 

今回紹介する論文は「脳卒中患者のバランス障害に何が有効なの?」という疑問に応えてくれる論文です(こちら)。

2019年にフランスのHuguesらの研究チームは、2019年1月までに登録されていた145本の論文を解析しています。

 

解析に含まれていた主な介入内容は、

機能的課題トレーニング(課題指向型トレーニング、歩行、起立着座運動、リーチング、ADLトレーニングなど)

筋骨格系アプローチ(筋トレ、筋に対する電気刺激、ストレッチング、モビライゼーションなど)

感覚トレーニング(異な感覚による知覚入力)

でした。

 

結果として、

 

バランス障害に対して

無治療との比較では、

  • 介入期間直後の効果は、機能的課題トレーニング(SMD:0.54)、機能的課題トレーニング+筋骨格系アプローチ+心肺機能トレーニングの組み合わせ(SMD:0.57)、自己身体認識を含んだ筋骨格系アプローチ(SMD:0.77)、筋トレ(SMD:0.66)で有効性が認められた。

 

  • 長期的な効果は、機能的課題トレーニング(SMD:0.6)、自己身体認識を含んだ筋骨格系アプローチ(SMD:0.65)、筋トレ(SMD:0.89)で有効性が認められた。

コントロール介入または通常ケアとの比較では、

  • 介入期間直後の効果は、機能的課題トレーニング(SMD:0.39)、筋トレ(SMD:1.05)、電気刺激(SMD:0.91)、機能的課題トレーニング+筋骨格系アプローチ+心肺機能トレーニングの組み合わせ(SMD:0.38)で有効性が認められた。

 

  • 長期的な効果は、機能的課題トレーニング(SMD:0.30)、機能的課題トレーニング+筋骨格系アプローチ+心肺機能トレーニングの組み合わせ(SMD:0.60)で有効性が認められた。

 

姿勢偏位に対して

無治療との比較では、

  • 介入期間直後の効果は、補助器具の使用(SMD:-0.21)、機能的課題トレーニング(SMD:-0.7)で有効性が認められた。

 

  • 長期的な効果は、有効性が認められた治療はなかった

 

コントロール介入または通常ケアとの比較では、

  • 介入期間直後および長期的な効果は、有効性が認められた治療はなかった

 

姿勢安定性に対しては、

無治療と比較して、

  • 介入期間直後の効果は、鍼治療(SMD:0.43)、機能的課題トレーニング(SMD:0.37)、モビライゼーション(SMD:0.61)、感覚トレーニング(SMD:1.46)で有効性が認められた。

 

  • 長期的な効果は、有効性が認められた治療はなかった

 

コントロール介入または通常ケアとの比較では

  • 介入期間直後の効果は、機能的課題トレーニング(SMD:0.97)、モビライゼーション(SMD:0.95)、感覚トレーニング(SMD:0.84)で有効性が認められた。

 

  • 長期的な効果は、機能的課題トレーニング(SMD:0.39)で有効性が認められた。

 

だそうです。

 

ただし、介入方法やアウトカムにバラつきがあるため、更なる研究が必要だそうです。

 

結果をまとめますと、

 

  • バランス障害には、主として機能的課題トレーニング機能的課題トレーニング+筋骨格系アプローチ+心肺機能トレーニングの組み合わせが、姿勢安定性には機能的課題トレーニングモビライゼーション、感覚トレーニングが有効。

 

ということになります。

 

もっと簡単にまとめると、バランス障害や姿勢安定性には、色々な課題でトレーニングした方が良いということだと思います。

 

脳を鍛えるためには、様々な刺激や課題を行うことが重要であることは既知のことと思います。

 

日々の治療がマンネリ化しないように、様々なアイディアを持っておく必要がありますね。