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「高次脳機能障害」がわからなすぎる。検査結果を「生活のしにくさ」に変換するコツ

高次脳機能、検査 、生活|2026.4.24|最終更新:2026.4.24|理学療法士が執筆・監修しています

この記事でわかること
  • 検査は生活をそのまま当てる道具ではなく、生活で起きるミスの「起きやすい条件」を推理するヒント
  • コツは「生活から逆算→タスクの要求を分解→検査所見を“エラー予測”に翻訳→観察と他者情報で裏取り」の4ステップ
  • 記録・申し送りは「症状名」ではなく、場面+起きるミス+リスク+支援で書くと一気に伝わる
3分で読めるよ

序文

高次脳機能障害って、用語が大きすぎて「結局この人は何が困るの?」が見えにくいですよね。検査は点数が出る一方で、生活は“場面・人・環境・疲労”で揺れまくる。だから若手ほど、検査⇄生活の変換で詰まりがちです。この記事では、検査を「生活のしにくさ」に落とし込むための“再現性のある手順”を紹介します。

検査と生活は1対1で結びつかない

「TMT-B遅い=家事できない」みたいな単純化は危険です。そもそも神経心理学検査は、生活機能の予測に関して“中等度”の関連にとどまることが多いと整理されています[1]。

特に重要なのは次の2点です。

  • 測った領域”と“生活の評価尺度”が対応しているほど当たりやすい(例:注意検査 ↔ 注意が必要な活動の評価)[1]。
  • 遂行機能は一枚岩じゃなく、検査が拾う要素もバラバラ。だからある検査は当たるが、別の検査は当たらないが普通に起きます[2]。

つまり、検査は「生活を言い当てる」よりも、

“どんな条件で失敗しやすいか(ミスの型)”を推理する材料として使うのが本質です。

検査結果→生活のしにくさ「4ステップ」

ここからが本題。若手が迷いにくい順番でいきます。

ステップ1:生活(参加・活動)から“逆算”する

最初に決めるのは「検査」じゃなくて、その人の生活のゴールと困り場面です。

例)復職/服薬管理/料理/買い物/金銭管理/子育ての段取り など。

この段階で「できる/できない」ではなく、何が“危ない・破綻する・時間がかかる・疲れる”のかを言語化します。

ステップ2:タスク分析で「要求」を分解する

同じ“料理”でも要求は違います。

  • 手順が多い(計画・更新)
  • 割り込みが入る(注意の切替)
  • 火や刃物(安全管理)
  • 同時進行(ワーキングメモリ)

ここでのコツは、“失敗したらどんなエラーになるか”を先に考えること(例:火を止め忘れる/調味料を二重投入/同じ工程を繰り返す)。

ステップ3:検査所見を「エラー予測」に翻訳する

点数やプロフィールを、そのまま生活に貼らずに、起こりやすいミスの型に直します。

  • 注意(選択・持続・分配)低下

 →「騒音/会話/テレビがあると抜ける」「二つ同時だと片方が落ちる」「後半で急に雑になる」

  • 記憶(保持・想起・展望記憶)低下

 →「聞いた直後はOKだが後で抜ける」「予定を“未来で思い出せない”】【メモがあっても見返さない等も含む】

  • 遂行機能(計画・抑制・柔軟性)低下

 →「始められない」「優先順位がつかない」「途中で別のことを始めて戻れない」「ルール違反が増える」

この翻訳を助けるのが、生活に近い“遂行課題”や“他者評価”です。脳卒中領域でも、遂行機能は机上検査だけでなく、実際の行為をみる評価(performance-based tools)の信頼性・妥当性が強い、と整理されています[3]。

ステップ4:観察・他者情報で「裏取り」して確定する

ここが一番大事。検査で立てた仮説を、次で確認します。

  • 自然に近い課題(例:買い物や用事をこなすタイプの課題)

Multiple Errands Test(MET)は、日常の遂行機能問題を予測しうる指標が報告されています[4]。

  • 他者評価(家族・支援者・療法士)

自己評価は“病識/気づき”の影響を受けやすい一方、療法士評価版DEXは重症度の検出や、実生活に近い課題との関連が示されています[5]。

まとめると:検査=仮説、観察と他者情報=確定診断(生活版)です。

記録・申し送りで刺さる「言い換えテンプレ」

症状名だけだと伝わりません。チームが動ける文章は、だいたいこの形です。

テンプレ:症状 → 場面 → 起きるミス → リスク → 支援

例(注意の分配が弱いケース)

  • 「注意の分配が苦手」だけで終わらせず、
  • 「調理中に声かけが入ると手順が止まり、火を消し忘れることがある → 火傷/火災リスク → 調理は“割り込み禁止”、タイマー+チェックリスト、見守り」

ICFで“参加”まで書くと一段レベルが上がる

ICFを枠組みにすると、「身体機能(検査)」から「活動・参加(生活)」へ視点が移ります。TBI領域ではICFが課題把握や目標設定(リハビリテーション・サイクル)に有用、という整理があります[6]。

また、参加(participation)を測る指標とICFコアセットの対応を検討したレビューもあり、“何を参加として追うか”の選び方にもICFが使える、と報告されています[7]。

支援は「機能を鍛える」だけじゃない

生活のしにくさに対しては、代償手段・環境調整・メタ認知的方略が効く場面が多いです。認知リハのエビデンス整理では、遂行機能障害に対するメタ認知的ストラテジートレーニングや、包括的・統合的アプローチが機能障害の軽減につながりうる、という推奨がまとめられています[8]。

おわりに

高次脳機能障害が難しく感じる最大の理由は、検査が「生活」を直接は語ってくれないからです。でも「生活から逆算→要求を分解→検査をエラー予測に翻訳→観察と他者情報で裏取り」の順番にすると、ちゃんと“生活の言葉”に変換できます。次に検査結果を見たら、点数より先に「この所見だと、どの場面で、どんなミスが増える?」を1行で言ってみてください。そこから臨床が回り始めます。

参考文献

[1] Chaytor N, Schmitter-Edgecombe M. The ecological validity of neuropsychological tests: a review of the literature on everyday cognitive skills. Neuropsychol Rev. 2003;13(4):181-197. PMID: 15000225.

[2] Burgess PW, Alderman N, Evans J, Emslie H, Wilson BA. The ecological validity of tests of executive function. J Int Neuropsychol Soc. 1998;4(6):547-558. PMID: 10050359.

[3] Poulin V, Korner-Bitensky N, Dawson DR, Bherer L. Stroke-specific executive function assessment: a literature review of performance-based tools. Aust Occup Ther J. 2013;60(1):3-19. PMID: 23414185.

[4] Cuberos-Urbano G, Caracuel A, Vilar-López R, et al. Ecological validity of the Multiple Errands Test using predictive models of dysexecutive problems in everyday life. J Clin Exp Neuropsychol. 2013;35(3):329-336. PMID: 23458357.

[5] Emmanouel A, et al. Validity of the Dysexecutive Questionnaire (DEX). Ratings by patients with brain injury and their therapists. Brain Inj. 2014;28(12):1581-1589. PMID: 25121459.

[6] Laxe S, et al. ICF profiling of patients with traumatic brain injury: an international professional survey. Disabil Rehabil. 2014;36(1):82-88. PMID: 23596999.

[7] Chung P, Yun SJ, Khan F. A comparison of participation outcome measures and the ICF Core Sets for traumatic brain injury. J Rehabil Med. 2014;46(2):108-116. PMID: 24241911.

[8] Cicerone KD, et al. Evidence-Based Cognitive Rehabilitation: Systematic Review of the Literature From 2009 Through 2014. Arch Phys Med Rehabil. 2019;100(8):1515-1533. PMID: 30926291.

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執筆│宇野  編集│てろろぐ 監修│

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