多職種連携、コミュニケーション 、SBAR|2026.8.28|最終更新:2026.8.28|理学療法士が執筆・監修しています
序文
「リハで歩けたのに、病棟では全然歩いてもらえていない」
「看護師さんに伝えたつもりなのに、介助方法が共有されていない」
「忙しそうで、どこまで話していいか分からない」
若手療法士がつまずきやすいのが、“リハの意図”を他職種の行動に変換して伝えることです。多職種連携は「仲良くすること」ではなく、患者さんの生活場面で同じ方針を再現することです。リハビリテーション領域の文献でも、職種間コミュニケーションは患者ケアに重要ですが、情報共有の場や参加職種、患者さんの関与にはばらつきがあると報告されています[1]。また、神経リハ領域でも、患者中心の職種間コミュニケーションが協働の質を高める可能性が示されています[2]。そこで今回は、看護師さんに15秒でリハの意図を伝える型を紹介します。
なぜリハの意図は看護師さんに伝わりにくいのか
リハ後の報告でありがちなのが、次のような伝え方です。
「今日、20m歩けました」
「立位は軽介助でした」
「トイレ動作を練習しました」
これは間違いではありません。
しかし、看護師さんから見ると、“それで病棟ではどうすればいいの?” が分かりにくい報告です。
看護師さんが知りたいのは、主に次の3つです。
今、病棟で実施してよい動作は何か。
どの条件なら安全か。
異常時に何を見て、誰へ報告するか。
リハ職は「能力」を伝えがちですが、病棟では「運用」が必要です。
たとえば「歩けました」ではなく、
「日中は見守りでトイレ歩行を試せます。ただし夜間はふらつきがあるのでポータブル継続でお願いします」
まで言えると、看護師さんの行動に変わります。
医療チームでは、単に複数職種が関わるだけの“multidisciplinary”より、目標や方針を共有して相互に関わる“interdisciplinary”なチームの方が、チームワークやチームの有効性が高いと報告されています[3]。つまり、リハの情報も「療法士の記録」で終わらせず、看護ケアに接続する必要があります。
15秒で伝える「結論・根拠・リスク・依頼」の型
おすすめは、SBARをリハ場面用に短くした、次の型です。
結論:今日から何をしてよいか
根拠:リハ中に何を確認したか
リスク:何に注意が必要か
依頼:看護師さんに何をお願いしたいか
SBARは、Situation・Background・Assessment・Recommendationの頭文字を取った構造化コミュニケーションです。システマティックレビューでは、SBARは特に電話報告や申し送り場面で患者安全を改善する中等度のエビデンスがあるとされています[4]。一方で、SBARは導入すれば自動的に機能するものではなく、現場で忠実に使えるよう工夫が必要とも報告されています[5]。
リハ場面では、長いSBARをそのまま使うより、最後を「依頼」で終えることが大事です。
15秒テンプレート
「○○さん、今日のリハでは日中トイレ歩行は見守りで可能でした。
ただ、方向転換で右へふらつきがあります。
夜間や眠気が強い時は転倒リスクが高いので、
今日の日中だけ、トイレは見守りで、方向転換時に右側へ立ってもらえますか?」
これで約15秒です。
ポイントは、「頑張ればできる」ではなく、条件つきで安全にできることを伝えることです。
悪い例はこうです。
「今日トイレ動作やりました。けっこうできていました。病棟でもお願いします」
これだと、看護師さんは困ります。
介助量、時間帯、注意点、お願いしたい行動が分からないからです。
良い例はこうです。
「今日、日中のトイレ移乗は手すり使用で見守りまで確認できました。
ただ、立ち上がり直後にふらつくので、最初の一歩だけ近くで見てください。
夜間はまだポータブル継続でお願いします」
この報告なら、看護師さんはすぐ動けます。
場面別:そのまま使える報告例
例1:脳卒中後、病棟歩行を広げたいとき
「Aさん、今日リハでは杖と短下肢装具で病棟廊下20mを見守りで歩けました。
ただ、疲れると左足の振り出しが引っかかります。
転倒予防のため、日中のトイレ歩行は見守り、夕方以降は車椅子でお願いします」
ここで伝えている意図は、
“歩けるから全部歩行”ではなく、“疲労で歩行能力が変わるので時間帯で分けたい” ということです。
例2:術後患者さんの離床を進めたいとき
「Bさん、今日端座位から立位まで血圧低下なく実施できました。
ただ、疼痛が強いと体幹前傾が出て立ち上がりに介助が必要です。
食後に一度、疼痛確認後、ベッド横立位だけ一緒に行ってもらえますか?」
ここでは、看護師さんに「歩行練習をお願いします」と丸投げしていません。
病棟で再現できる最小単位の行動にしています。
例3:転倒リスクを共有したいとき
「Cさん、リハでは立位保持は安定していますが、方向転換で足が交差します。
特にトイレ後に急いで戻る時が危ないです。
ナースコール後に立つこと、方向転換だけ見守ることを統一したいです」
リハ領域では、SBARを転倒リスクと管理の共有に用いた報告もあります[6]。転倒予防の報告では、「転びそうです」だけでなく、どの動作で、どの条件で、何を統一するかまで言うことが重要です。
例4:看護師さんが忙しそうなとき
忙しいタイミングでは、前置きを短くします。
「15秒だけ共有です。Dさん、今日から日中の移乗は見守りでいけそうです。
ただ、ブレーキ忘れがあります。
車椅子移乗時はブレーキ確認の声かけだけ統一お願いします」
この「15秒だけ共有です」はかなり使えます。
相手の時間を奪いすぎない姿勢が伝わり、報告のハードルが下がります。
おわりに
多職種連携がうまくいかないとき、原因は「看護師さんが分かってくれない」ではないことが多いです。
多くの場合、リハ職の報告が“評価結果”で止まっていて、“病棟での行動”に変換されていないのです。
明日からは、次の型だけ覚えてください。
結論:何をしてよいか
根拠:何を確認したか
リスク:何が危ないか
依頼:何をお願いしたいか
リハの意図は、長く説明しなくても伝えられます。
大事なのは、専門用語を並べることではなく、看護師さんが次のケアで迷わない言葉にすることです。
まずは1人の患者さんで、15秒報告を試してみてください。
病棟での活動量、介助方法の統一、そして患者さんの安全が少しずつ変わっていきます。





















