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生活期を支える 転倒⑤ 変形性膝関節症

転倒、 転倒予防、変形性関節症|2024.6.21|最終更新:2024.6.21|理学療法士が執筆・監修しています

この記事でわかること
  • 膝OAは転倒にリスクを高める
  • 膝OA患者の転倒リスクには、様々な因子が関連している
  • 筋力やバランストレーニングが転倒予防に有効
3分で読めるよ

序文

前回はパーキンソン病患者の転倒についてまとめました。今回は変形性膝関節症(膝OA)の転倒についてまとめます。膝OAは高齢者を中心に多くの人々が経験する慢性的な関節疾患です。この病気は、膝関節の痛みや不安定さを引き起こし、日常生活に大きな影響を及ぼします。特に、転倒のリスクが高まることが問題視されています。転倒は骨折や他の重篤な障害を引き起こす可能性があり、その予防は極めて重要です。この記事では、膝OA患者の転倒リスクに関する研究結果や、効果的な予防策について紹介します。

膝OAの転倒リスク

膝OA患者の転倒リスクについて調査したメタ解析では、症候性の膝OAは再発性の転倒リスクと関連しており、X線画像による膝OAは転倒リスクと関連していたことが報告されています[1]。

膝OA患者の転倒リスク因子に関するシステマティックレビューでは、バランス障害、筋力低下、併存疾患の存在、症状のある関節の数の増加、膝の痛み、膝の不安定性、固有受容障害、歩行補助具の使用が転倒リスクと関連していることが報告されています[2]。

人工膝関節置換術を受ける膝OA患者の転倒率を調査したシステマティックレビューでは、術前の転倒率は23%~63%術後の転倒率は12%~38%だったことが報告されています[3]。

地域在住成人1619人を対象に、OAの転倒リスクについて調査したところ、転倒リスクはOAの関節数が1つだと54%2つだと74%3-4つだと85%増加することが報告されています[4]。

膝OA患者の立位バランス能力を調査したメタ解析では、膝OA患者は立位バランス能力が健常者よりも低下していることが報告されています[5]。

膝OA患者760人を対象に、転倒リスクに関連する因子を調査したところ、高血圧、抗うつ薬の使用、神経障害、インスリン使用が転倒リスクと関連していたことが報告されています[6]。

以上をまとめますと、変形性膝関節症(膝OA)患者の転倒リスクは、症状の有無やX線診断に関わらず、バランス障害や筋力低下が主要なリスク因子であり、これが転倒の一因となっています。手術前後の転倒率のデータから、人工膝関節置換術が転倒リスクに影響を与えることが示唆されます。また、関節の数が増えるほど転倒リスクも高まり、併存疾患(例えば高血圧や神経障害)や特定の薬剤(抗うつ薬やインスリン)の使用もリスクを増加させる要因です。これらのリスク因子を理解し、膝OA患者に対しては包括的な転倒予防策が必要です。

膝OAの転倒対策

膝OA患者の転倒リスクに対する理学療法介入に関するシステマティックレビューでは、筋力トレーニング、太極拳、有酸素運動が転倒リスク軽減に有効だったことが報告されています[7]。

両側の膝OA患者39人を対象に、6週間の等速性大腿四頭筋およびハムストリングの強化エクササイズの効果を調査したところ、バランス(BBS)、筋力、ROM、WOMAC、身体機能テストスコアが改善したことが報告されています[8]。

膝OA患者41人を対象に、6か月間の自宅ベースの修正otagoエクササイズの効果を調査したところ、平衡感覚テスト(mCTSIB)、安定性限界、転倒に対する自己効力感(短縮版Falls Efficacy Scale-International)が改善したことが報告されています[9]。

膝OA患者40人を対象に、週3日×6週間の身体意識療法の効果を調査したところ、転倒リスク、筋力、バランス能力が改善することが報告されています[10]。

以上をまとめますと、膝OA患者の転倒リスク軽減には、理学療法介入が有効であることが示されています。具体的には、筋力トレーニング、太極拳、有酸素運動が転倒リスクの低減に寄与します。また、特定のエクササイズプログラムを実施することで、バランス能力、筋力、関節可動域、平衡感覚、および自己効力感が改善されることが報告されています。特に、6週間から6か月の期間にわたる継続的なエクササイズは、転倒リスクを大幅に軽減する効果があるとされています。したがって、膝OA患者に対する包括的な運動プログラムの導入が、転倒予防において重要です。

おわりに

今回は膝OA患者の転倒についてまとめました。膝OAの患者にとって、転倒リスクの管理は非常に重要で、筋力トレーニングやバランストレーニング、適切なエクササイズプログラムが効果的であることが明らかになっています。これらの対策を日常生活に取り入れることで、転倒リスクを大幅に軽減し、生活の質を向上させることが可能です。理学療法士や医療専門家と連携し、個々のニーズに合った運動プランを実践することが、転倒予防の鍵となります。

参考文献

[1] Zhang, et al. Association of knee and hip osteoarthritis with the risk of falls and fractures: a systematic review and meta-analysis. Arthritis Res Ther. 2023 Sep 29;25(1):184.

[2] Manlapaz, et al. Risk Factors for Falls in Adults with Knee Osteoarthritis: A Systematic Review. PM R. 2019 Jul;11(7):745-757.

[3] Frattura, et al. Risk of falls in patients with knee osteoarthritis undergoing total knee arthroplasty: A systematic review and best evidence synthesis. J Orthop. 2018 Aug 24;15(3):903-908.

[4] Doré, et al. Lower-extremity osteoarthritis and the risk of falls in a community-based longitudinal study of adults with and without osteoarthritis. Arthritis Care Res (Hoboken). 2015 May;67(5):633-9.

[5] Hatfield, et al. Clinical Tests of Standing Balance in the Knee Osteoarthritis Population: Systematic Review and Meta-analysis. Phys Ther. 2016 Mar;96(3):324-37.

[6] Alenazi, et al. Generalized and localized osteoarthritis and risk of fall among older adults: the role of chronic diseases and medications using real world data from a single center. Eur Rev Med Pharmacol Sci. 2023 May;27(9):3957-3966.

[7]  Mat, et al. Physical therapies for improving balance and reducing falls risk in osteoarthritis of the knee: a systematic review. Age Ageing. 2015 Jan;44(1):16-24.

[8] Gezginaslan, et al. Effects of isokinetic muscle strengthening on balance, proprioception, and physical function in bilateral knee osteoarthritis patients with moderate fall risk. Turk J Phys Med Rehabil. 2018 Oct 9;64(4):353-361.

[9] Mat, et al. Effect of Modified Otago Exercises on Postural Balance, Fear of Falling, and Fall Risk in Older Fallers With Knee Osteoarthritis and Impaired Gait and Balance: A Secondary Analysis. PM R. 2018 Mar;10(3):254-262.

[10] Alpay, et al. Effects of basic body awareness therapy on pain, balance, muscle strength and functionality in knee osteoarthritis: a randomised preliminary trial. Disabil Rehabil. 2023 Dec;45(26):4373-4380.

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執筆│宇野  編集│てろろぐ 監修│

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