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生活期を支える 転倒予防④ パーキンソン病

転倒、 転倒予防、パーキンソン病|2024.6.14|最終更新:2024.6.14|理学療法士が執筆・監修しています

この記事でわかること
  • パーキンソン病患者は転倒リスクが高い
  • 身体機能だけでなく、薬剤や併存症も転倒リスクに関連
  • 運動介入はパーキンソン病患者の転倒リスクを軽減するが、プログラムの内容と持続期間の調整が必要
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序文

前回は認知症患者の転倒についてまとめました。今回はパーキンソン病患者の転倒についてまとめていきます。パーキンソン病は神経変性疾患であり、患者の生活に様々な影響を及ぼします。その中でも特に重要なのが転倒リスクの増加です。転倒は患者の生活の質を大きく低下させ、骨折や頭部外傷といった深刻な問題を引き起こすことがあります。転倒予防はパーキンソン病治療の重要な側面であり、効果的な介入策を実施することが患者の安全と健康維持に繋がります。

パーキンソン病患者の転倒リスク

高齢者の転倒リスクを増加させる因子を調査したメタ解析では、パーキンソン病は健常者と比較して、約3倍転倒リスクが高いことが報告されています[1]。

パーキンソン病患者の転倒リスクを高める外因性または行動特性を調査した統合的レビューでは、パーキンソン病患者は一般的には住み慣れた家庭環境での日常活動中に発生しますが、地域社会に出たときにも発生しており、平坦でない不慣れな環境や急ぐなどの行動を取った際に転倒リスクが高くなることが報告されています[2]。

パーキンソン病患者2876人を対象に、転倒の危険因子を調査したところ、罹病期間、Hoehn and Yahr病期、安静時振戦の有無、心血管疾患、関節炎、その他の併存疾患、抗うつ薬、脳深部刺激手術、TUGテスト、意味性流暢性が関連していたことが報告されています[3]。

パーキンソン病患者46人を対象に、転倒の危険因子を調査したところ、パーキンソン病患者では不安胃腸障害と正の相関と、振戦とは負の相関を示したことが報告されています[4]。

パーキンソン病患者87人を対象に、転倒の危険因子を調査したところ、心血管機能障害、抗うつ薬の使用、レム睡眠行動障害が転倒と有意に関連していたことが報告されています[5]。

以上をまとめますと、パーキンソン病患者の転倒リスクは健常者と比較して約3倍高いと報告されています。転倒は住み慣れた家庭環境や地域社会での日常活動中に発生しやすく、不慣れな環境や急ぐ行動によってリスクが高まります。罹病期間、Hoehn and Yahr病期、心血管疾患、関節炎、抗うつ薬の使用、TUGテスト、不安、胃腸障害、レム睡眠行動障害が転倒リスクと関連しているため、多角的な視点で転倒リスクを考える必要があります。

パーキンソン病患者の転倒対策

パーキンソン病患者の転倒に対する介入に関するシステマティックレビューでは、運動介入によって、パーキンソン病患者の1回以上の転倒を10%減少させることができることが報告されています[6]。

パーキンソン病患者474人を対象に、6か月全12回の転倒回避戦略トレーニングプログラム(バランス、筋力強化、環境調整)の効果を調査したところ、対照群(DVDやアドバイスによる教育のみ)と介入群では、転倒を繰り返す割合に差はなかったことが報告されています[7]。

パーキンソン病患者231人を対象に、1回40~60分間×週3回×6か月間の運動プログラムの効果を調査したところ、対照群と比較して介入群は身体機能が改善していましたが、転倒発生率に差はなかったことが報告されています[8]。

パーキンソン病患者84人を対象に、8週間の多要素バランストレーニングの効果を調査したところ、介入群の方が介入から12か月後までの転倒による傷害が少なかったことが報告されています[9]。

パーキンソン病患者40人を対象に、週2回×8週間のピラティスの効果を調査したところ、介入群では対照群よりも動的バランス能力が向上していたことが報告されています[10]。

パーキンソン病患者27人を対象に、週2回×8週間のヨガ介入の効果を調査したところ、介入群では運動機能、姿勢安定性、歩行能力、すくみ足が改善し、転倒リスクが減少したことが報告されています[11]。

以上をまとめますと、運動介入はパーキンソン病患者の転倒リスクを10%減少させることができます。しかし、6か月の転倒回避戦略トレーニングでは転倒を繰り返す割合に差はなく、週3回の運動プログラムでも転倒発生率に差は見られませんでした。一方、8週間の多要素バランストレーニングでは転倒による傷害が減少し、ピラティスやヨガは動的バランス能力や運動機能、姿勢安定性、歩行能力を向上させ、転倒リスクの減少が報告されています。運動介入はパーキンソン病患者の転倒リスクを軽減しますが、プログラムの内容と持続期間の調整が必要です。

おわりに

今回はパーキンソン病患者の転倒についてまとめました。パーキンソン病患者の転倒予防は、患者の生活の質を守るために欠かせない取り組みです。運動介入や環境調整、患者教育など、多角的なアプローチが必要です。医療従事者として、最新の研究に基づいた効果的な介入策を導入し、患者一人ひとりに合わせたサポートを提供することが求められます。

参考文献

[1] Xu, et al. The risk of falls among the aging population: A systematic review and meta-analysis. Front Public Health. 2022 Oct 17:10:902599.

[2] Kuljeerung, et al. Extrinsic and Behavioral Fall Risk Factors in People With Parkinson’s Disease: An Integrative Review. Rehabil Nurs. 2021 Jan-Feb;46(1):3-10.

[3] Parashos, et al. Falls in Parkinson disease: analysis of a large cross-sectional cohort. J Parkinsons Dis. 2013;3(4):515-22.

[4] Kwon, et al. Risk Factors for Falls in Patients with de novo Parkinson’s Disease: A Focus on Motor and Non-Motor Symptoms. J Mov Disord. 2020 May;13(2):142-145.

[5] Schrag, et al. Why do patients with Parkinson’s disease fall? A cross-sectional analysis of possible causes of falls. NPJ Parkinsons Dis. 2015 Jun 11:1:15011.

[6] Allen, et al. Interventions for preventing falls in Parkinson’s disease. Cochrane Database Syst Rev. 2022 Jun 6;6(6):CD011574.

[7] Seymour, et al. Multicentre, randomised controlled trial of PDSAFE, a physiotherapist-delivered fall prevention programme for people with Parkinson’s. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2019 Jul;90(7):774-782.

[8] Canning, et al. Exercise for falls prevention in Parkinson disease: a randomized controlled trial. Neurology. 2015 Jan 20;84(3):304-12.

[9] Wong-Yu, et al. Multisystem Balance Training Reduces Injurious Fall Risk in Parkinson Disease: A Randomized Trial. Am J Phys Med Rehabil. 2019 Mar;98(3):239-244.

[10] Çoban, et al. Effect of clinical Pilates training on balance and postural control in patients with Parkinson’s disease: a randomized controlled trial. J Comp Eff Res. 2021 Dec;10(18):1373-1383.

[11] Puymbroeck, et al. Functional Improvements in Parkinson’s Disease Following a Randomized Trial of Yoga. Evid Based Complement Alternat Med. 2018 Jun 3:2018:8516351.

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執筆│宇野  編集│てろろぐ 監修│

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