痛み、腰痛、運動|2024.9.13|最終更新:2024.9.13|理学療法士が執筆・監修しています
この記事でわかること
- 腰痛は世界中で多くの人が悩んでいる問題で、高齢者ではさらにその割合が高くなる
- 腰痛の原因は多岐にわたり、様々な要因が複雑に絡み合っています。
- 腰痛に対しては運動療法、心理的介入、薬物療法などが有効
序文
腰痛は、現代社会における最も一般的な健康問題の一つであり、その影響は個人の生活の質を低下させるだけでなく、医療システムや労働力にも大きな負担をもたらします。腰痛の原因は多岐にわたり、特定の要因が絡み合うことが多いため、その診断と治療は複雑です。今回は、腰痛の疫学、主要な原因、そして効果的なリハビリテーション戦略についてまとめていきます。
腰痛の概要
疫学
全世界の腰痛の有病率の調査では、日常生活に支障をきたす腰痛の有病率は7.3%で、全世界で5億4000万人が腰痛を患っていることが報告されています[1]。
高齢者の腰背部痛について調査したシステマティックレビューでは、腰背部痛を有する人は21%~75%存在し、身体機能やADL低下と関連していることが報告されています[2]。
腰痛の原因[3]
画像上の変化
椎間板変性(Modic1型)、椎間板突出、椎間板脱出、腰椎分離症
神経症状に関連する腰痛
神経根障害、腰部脊柱管狭窄症
特別な治療が必要となる可能性のある腰痛
脊椎骨折、炎症性疾患(軸性脊椎関節炎など)、悪性腫瘍、感染症、腹腔内病変
生物・心理・社会的要因
生物学的因子(筋の大きさ、構造変化、筋活動の協調性など)、心理学的因子(自己効力感、心理的苦痛、恐怖など)、社会経済的因子(低所得、低学歴)
腰痛による悪影響
労働困難、社会的アイデンティティの喪失、経済状況の悪化、医療負担の増加
腰痛への介入
慢性腰痛に有効な運動方法を調査したメタ解析では、痛みの軽減にはピラティス、マインド-ボディエクササイズ、コアベースの運動、障害の軽減にはピラティス、筋力強化運動、コアベースの運動が有効な運動方法だったことが報告されています[4]。
別の慢性腰痛に有効な運動方法を調査したメタ解析では、痛みの軽減には太極拳、ヨガ、ピラティス運動、スリング運動、モーターコントロール運動、体幹またはスタビライゼーション運動が、身体機能の改善にはヨガと体幹またはスタビライゼーション運動が有効な運動方法だったことが報告されています[5]。
腰痛患者の痛みの軽減に有効な運動量を調査したメタ解析では、痛みを改善するために必要な最小限の運動量は520MET分/週だったことが報告されています[6]。
非特異的腰痛び対する心理的介入の有効性を調査したメタ解析では、認知行動療法または疼痛教育を理学療法と組み合わせることで、身体機能や疼痛強度がより改善することが報告されています[7]。
急性または亜急性期の非特異的腰痛に有効な介入方法を調査したメタ解析では、運動、温熱ラップ、オピオイド、徒手療法、NSAIDが痛みの軽減に有効だったことが報告されています[8]。
おわりに
今回は腰痛について、疫学や原因、介入方法についてまとめました。腰痛は多様な原因と複雑な病態のため、治療と管理が難しい疾患の一つですが、適切なリハビリテーションアプローチを通じて、多くの患者が痛みの軽減と機能回復を達成することができます。
参考文献
[1]
Allen, et al. Global, regional, and national incidence, prevalence, and years lived with disability for 310 diseases and injuries, 1990-2015: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2015. Lancet. 2016 Oct 8;388(10053):1545-1602.
[2]
Souza, et al. Prevalence of low back pain in the elderly population: a systematic review. Clinics (Sao Paulo). 2019 Oct 28:74:e789.
[3]
Hartvigsen, et al. What low back pain is and why we need to pay attention. Lancet. 2018 Jun 9;391(10137):2356-2367.
[4]
Rodríguez, et al. Best Exercise Options for Reducing Pain and Disability in Adults With Chronic Low Back Pain: Pilates, Strength, Core-Based, and Mind-Body. A Network Meta-analysis. J Orthop Sports Phys Ther. 2022 Aug;52(8):505-521.
[5]
Li, et al. Exercise intervention for patients with chronic low back pain: a systematic review and network meta-analysis. Front Public Health. 2023 Nov 17:11:1155225.
[6]
Liang, et al. The Best Exercise Modality and Dose for Reducing Pain in Adults With Low Back Pain: A Systematic Review With Model-Based Bayesian Network Meta-analysis. J Orthop Sports Phys Ther. 2024 May;54(5):315-327.
[7]
Ho, et al. Psychological interventions for chronic, non-specific low back pain: systematic review with network meta-analysis. BMJ. 2022 Mar 30:376:e067718.
[8]
Gianola, et al. Effectiveness of treatments for acute and subacute mechanical non-specific low back pain: a systematic review with network meta-analysis. Br J Sports Med. 2022 Jan;56(1):41-50.
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執筆│宇野 編集│てろろぐ 監修│幸
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