痛み、手、運動|2024.10.19|最終更新:2024.10.19|理学療法士が執筆・監修しています
序文
今回は手関節や手指の痛みについてまとめます。手関節や手指の痛みは、日常生活や職場での作業に大きな影響を与える問題です。特に医療従事者にとって、患者さんのケアや業務において手の機能は不可欠であり、この部位の痛みが仕事の効率や質を著しく低下させることがあります。より効果的な治療とサポートを提供することで、患者さんの生活質の向上につながります。
手関節、手指痛の概要
疫学
有病率:全体7.4%(男性6.6%、女性8.6%)[1]
オフィスワーカー6% [2]
日常生活に支障が出ている割合:21.5%
リスク因子[3]
- 加齢
- 女性
- 仕事による身体的負担が大きい
- 仕事による心理的負担が大きい
- 小児/青年の骨端線の異常な形態
- 衝撃工具の高頻度使用。
手関節、手指痛の原因疾患
- 変形性関節症: 手関節や指の関節の軟骨がすり減り、骨が変形して痛みが生じる。
- ヘバーデン結節: 指の第一関節(DIP関節)が変形し痛みが生じる。
- ブシャール結節: 指の第二関節(PIP関節)が変形し痛みが生じる。
- 母指CM関節症: 親指の付け根の関節が変形し痛みが生じる。
- ドケルバン病: 親指側の腱鞘炎で、親指を動かすときに痛みが生じる。
- 関節リウマチ: 自己免疫疾患の一種で、関節の滑膜に慢性的な炎症が起こり痛みが生じる。
- 手根管症候群: 手首の内側で正中神経が圧迫され、手指のしびれや痛み、親指の脱力などが生じる。
- 頸椎症性神経根症: 頸椎の変性が原因で神経が圧迫され、腕や手に痛みやしびれが生じる。
手関節、手指痛への介入
変形性手関節症患者に対す津運動の効果を調査したシステマティックレビューでは、運動介入によって痛みや手の機能が改善することが報告されています[4]。
手関節痛を有する女性45名を対象に、手首安定化運動+テーピング療法の効果を調査したところ、手首安定化運動+テーピング療法は運動単独や受動的関節可動域運動よりも機能障害が有意に改善したことが報告されています[5]。
手根中手骨関節炎患者180人を対象に、多要素作業療法(患者教育、手の運動、装具、補助器具)の効果を調査したところ、手の痛みと機能が改善したことが報告されています[6]。
オフィスワーカー64名を対象に、人間工学の推奨に基づいた作業環境調整介入(テーブル、椅子、モニターの位置調整)の効果を調査したところ、介入によって手関節・手の痛みが改善することが報告されています[7]。
ヘバーデン結節またはブシャール結節がある女性52人を対象に、第2指または第3指の夜間装具の効果を調査したところ、手の痛みや機能が改善したことが報告されています[8]。
おわりに
手関節や手指の痛みは、患者の日常生活に大きな影響を与えるだけでなく、医療従事者としての私たちにも深い理解と適切な対応が求められます。痛みの原因や症状は多岐にわたり、患者一人ひとりに異なる治療アプローチが必要です。本ブログを通じて、基本的な知識から最新の治療法までを共有することで、皆様の臨床判断に少しでも役立つことを願っています。