痛み、股関節痛、運動|2024.10.04|最終更新:2024.10.04|理学療法士が執筆・監修しています
この記事でわかること
- 65歳以上の高齢者の約19.2%が股関節痛を経験する。
- 変形性股関節症や関節唇、軟骨などの異常によって生じる。
- 運動や器具の使用が痛みの軽減に有効。
序文
股関節痛は、臨床現場において非常に一般的に見られる症状の一つであり、その原因や症状の多様性から、的確な診断と適切な介入が求められます。今回は股関節痛の疫学、主な原因、治療戦略についてまとめます。患者に対する最良の治療を提供し、臨床実践においてより質の高いケアを提供できるようになると思います。
股関節痛の概要
疫学
65歳以上の地域在住高齢者:19.2%[1]
55歳以上の地域在住高齢者:既に股関節置換手術を受けている人は32.1/1000人、人工関節置換術を検討する必要があるレベルの痛みと障害を有する人は13.5/1000人[2]
股関節痛の原因組織[3]
関節内の原因
変形性股関節症:股関節の関節腔の狭小化や形態異常などによって骨、軟骨、滑液包などに炎症が生じる。
関節唇断裂:発育性股関節形成不全 (DDH) 、変形性股関節症、反復的な旋回または股関節屈曲を必要とする活動などで生じる。
関節内遊離体:滑膜軟骨腫症、色素性絨毛結節性滑膜炎、離断性骨軟骨炎、変形性関節症、無菌性骨壊死など、股関節周囲で発生する他の病理学的プロセスに関連して発生する。
大腿寛骨臼インピンジメント(FAI):軟骨と関節唇の摩耗または寛骨臼の過剰被覆によって大腿骨頭頚部接合部が寛骨臼縁に衝突して生じる。
軟骨損傷:関節唇の断裂、遊離体、脱臼、FAI、無血管性骨壊死、寛骨臼形成不全、大腿骨頭すべり症などによって生じる。
関節外の原因
腸腰筋腱炎:腸腰筋腱が骨の突出部を移動することによって起こる内部弾発と腸脛靭帯または大殿筋腱が大転子を弾発することによって起こる外部弾発があり、これらが繰り返されることにより炎症が生じる。
腸脛靭帯および大転子滑液包炎:大転子と腸脛靭帯との間の反復摩擦によって生じる。
殿筋腱損傷:腱炎や浮腫から発生し、腱肥厚、部分断裂へと進行し、最終的には殿筋付着部での完全な剥離または断裂へ発展する。
股関節痛への介入
変形性股関節症に対する非薬物介入について、欧州のガイドライン(EULAR)では、個別化された多要素介入、運動、履物・歩行補助具・補助器具の使用、仕事関連のアドバイス、ライフスタイルを改善するための行動変容テクニックが推奨されています[4]。
変形性股関節症に対する非薬物介入を調査したシステマティックレビューでは、運動療法とマニュアルセラピーが痛みや身体機能の改善に有効であることが報告されています[5] 。
人工股関節置換術後患者の術後疼痛に対する非薬物介入を調査したメタ解析では、術前後の運動、鍼治療、電気刺激が疼痛緩和に有効だったことが報告されています[6]。
大腿寛骨臼インピンジメント症候群に対する理学療法について調査したメタ解析では、体幹強化、運動療法、監視下理学療法が有効であることが報告されています[7]。
おわりに
今回は股関節痛の基本事項や介入についてまとめました。股関節痛は原因の多様性や個々の患者の状態が多様なため複雑ですが、正しい知識と適切な介入を行うことで、患者の痛みを軽減し、機能を回復させることが可能です。今回紹介した内容が、医療現場での診療の一助となり、股関節痛に悩む患者に対して、より質の高いケアを提供するための参考になれば幸いです。
参考文献
[1]
Dawson, et al. Epidemiology of hip and knee pain and its impact on overall health status in older adults. Rheumatology (Oxford). 2004 Apr;43(4):497-504.
[2]
Fear, et al. Prevalence of hip problems in the population aged 55 years and over: access to specialist care and future demand for hip arthroplasty. Br J Rheumatol. 1997 Jan;36(1):74-6.
[3]
Tibor, et al. Differential diagnosis of pain around the hip joint. Arthroscopy. 2008 Dec;24(12):1407-21.
[4]
Moseng, et al. EULAR recommendations for the non-pharmacological core management of hip and knee osteoarthritis: 2023 update. Ann Rheum Dis. 2024 May 15;83(6):730-740.
[5]
Ceballos-Laita, et al. Effects of non-pharmacological conservative treatment on pain, range of motion and physical function in patients with mild to moderate hip osteoarthritis. A systematic review. Complement Ther Med. 2019 Feb:42:214-222.
[6]
Li, et al. Non-pharmaceutical treatments to relieve pain or reduce opioid analgesic intake and improve quality of life after total hip replacement: a meta analysis. Am J Transl Res. 2022 Oct 15;14(10):6828-6845.
[7]
Hoit, et al. Physiotherapy as an Initial Treatment Option for Femoroacetabular Impingement: A Systematic Review of the Literature and Meta-analysis of 5 Randomized Controlled Trials. Am J Sports Med. 2020 Jul;48(8):2042-2050.
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執筆│宇野 編集│てろろぐ 監修│幸
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