痛み、膝痛、運動|2024.9.27|最終更新:2024.9.27|理学療法士が執筆・監修しています
この記事でわかること
- 膝痛は中高年層で一般的に見られ、関節包や靭帯など痛覚受容器を持つ組織の損傷で生じる。
- 原因疾患には疾患には変形性膝関節症、半月板損傷、靭帯損傷などが含まれる。
- 介入法としては、運動療法が有効とされているが、費用対効果についてはさらなる研究が必要。
序文
テ膝関節痛は、特に高齢者やスポーツ選手に多く見られる一般的な症状であり、患者の日常生活に大きな影響を及ぼすことがあります。膝関節は、体重を支える主要な関節の一つであり、その構造の複雑さゆえに、様々な要因によって痛みが生じる可能性があります。膝関節痛に対する治療法の選択肢は拡大しており、薬物療法やリハビリテーション、さらには手術まで、多岐にわたるアプローチが存在します。今回は、膝関節痛についての基本事項と介入方法についてまとめていきます。キスト
膝痛の概要
疫学
40-74歳の地域住民:膝痛有病率6.7%[1]
60歳以上の地域住民:KL分類2以上 男性47.0%、女性70.2%[2]
膝痛の原因
痛覚受容器を有する組織(関節包、靭帯、滑膜、骨、半月板の外縁)のダメージによって誘発される[3]。
MRIで評価した骨髄病変は膝関節痛と強く関連している[4]。
原因疾患
- 変形性膝関節症:関節軟骨が年齢とともに弾力性を失い、過用によりすり減り、関節が変形する。また骨折、靱帯や半月板損傷などの外傷、化膿性関節炎などの感染の後遺症として発症することがある。
- 膝蓋大腿関節症:膝蓋骨と大腿骨との関節の軟骨がすり減ったり、骨が変形することで痛みを生じる。
- 半月板損傷:膝の動きをスムーズにする半月板が損傷する。外傷や繰り返しの運動が原因で生じる。
- 靭帯損傷:膝関節を安定させる靭帯が切れたり、部分断裂したりすることで、関節が不安定になり、痛みが生じる。
- 関節リウマチ:自己免疫疾患の一種で、免疫システムが自身の関節を攻撃することで炎症が生じ、滑膜が腫れ、最終的に関節が破壊される。
- 偽痛風:ピロリン酸カルシウム結晶が関節に沈着し、炎症反応を誘発し、痛みを引き起こす。
- 滑液包炎:関節の動きをスムーズにする滑液包が繰り返しの摩擦や外傷によって炎症が生じ、痛みが生じる。
- 鷲足炎:過度の運動や繰り返しの動作によって膝の内側にある鵞足と呼ばれる部分の腱に炎症が生じて、痛みが生じる。
- 腸脛靭帯炎:ランニングなどの反復運動によって膝の外側を走る腸脛靭帯に炎症が生じて痛みが生じる。
膝痛への介入
変形性膝関節症に対する非薬物療法の有効性を調査したメタ解析では、運動(特に筋力トレーニング)、パルス電磁場、お灸が有効であり、他にもバランス トレーニング、食事療法、ジアテルミー、ハイドロセラピー、高レベルレーザー療法、干渉電流、泥パック、神経筋電気刺激、筋骨格操作、衝撃波療法、局所筋肉振動などが有効である可能性が示唆されていることが報告されています[5]。
膝関節前方の痛きに対する非外科的介入の有効性を調査したメタ解析では、多要素の理学療法プログラム、足部装具、運動全般、CKC運動、運動と併用した膝蓋骨テーピング、鍼治療が有効であることが報告されています[6]。
人工膝関節全置換術後の慢性痛に対する運動の効果を調査したシステマティックレビューでは、慢性痛に対して運動プログラムは有意な効果が認められなかったことが報告されています[7]。
変形性膝関節症以外の膝痛に対する介入の費用対効果を調査したシステマティックレビューでは、非外科的治療としての理学療法、運動、カウンセリング、装具、アドバイスの費用対効果についてはまだ明らかになっていないことが報告されています[8]。
おわりに
今回は膝関節痛についてまとめました。膝関節痛は患者の日常生活や活動能力に大きな影響を与えるため、早期の診断と適切な治療が重要です。個々の患者の症状や状態に応じた治療方針を立てることが、痛みの軽減や機能回復に繋がります。
参考文献
[1]
Takahashi, et al. Epidemiological profiles of chronic low back and knee pain in middle-aged and elderly Japanese from the Murakami cohort. J Pain Res. 2018 Dec 12:11:3161-3169.
[2]
Muraki, et al. Prevalence of radiographic knee osteoarthritis and its association with knee pain in the elderly of Japanese population-based cohorts: the ROAD study. Osteoarthritis Cartilage. 2009 Sep;17(9):1137-43.
[3]
Felson. The sources of pain in knee osteoarthritis. Curr Opin Rheumatol. 2005 Sep;17(5):624-8.
[4]
Felson, et al. The association of bone marrow lesions with pain in knee osteoarthritis. Ann Intern Med. 2001 Apr 3;134(7):541-9.
[5]
Ferreira, et al. Non-Pharmacological and Non-Surgical Interventions for Knee Osteoarthritis: A Systematic Review and Meta-Analysis. Acta Reumatol Port. 2019 Jul 29;44(3):173-217.
[6]
Collins, et al. Efficacy of nonsurgical interventions for anterior knee pain: systematic review and meta-analysis of randomized trials. Sports Med. 2012 Jan 1;42(1):31-49.
[7]
Dennis, et al. Effects of presurgical interventions on chronic pain after total knee replacement: a systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials. BMJ Open. 2020 Jan 20;10(1):e033248.
[8]
Afzali, et al. Cost-effectiveness of treatments for non-osteoarthritic knee pain conditions: A systematic review. PLoS One. 2018 Dec 19;13(12):e0209240.
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執筆│宇野 編集│てろろぐ 監修│幸
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