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痛みを再考する⑦ 頸部痛

痛み、頸部痛、運動|2024.9.20|最終更新:2024.9.20|理学療法士が執筆・監修しています

この記事でわかること
  • 頸部痛は多くの身体的、環境的、心理的要因によって引き起こされ、特に女性の有病率が高い。
  • 頸部痛の原因には頚椎症や繊維筋痛症などの疾患が含まれ、さまざまな治療法が存在する。
  • 徒手療法、運動療法、認知行動療法などが頸部痛の改善に有効であることが示されている。
3分で読めるよ

序文

頸部痛は、現代社会において重要な課題であり、特にデスクワークや長時間のスマートフォン使用などがその一因となっています。首の痛みは一過性のものから慢性的なものまで多岐にわたり、患者の日常生活に大きな影響を与えることがあります。頸部痛の原因、診断、そして効果的な治療法を理解することは、患者のQOLを向上させるために不可欠です。ここでは、頸部痛の基礎知識や治療アプローチについてまとめていきます。

頸部痛の概要

疫学[1]

年間発生率:人口10万人あたり599.6~1145件

有病率:人口10万人あたり2443.9~6151.2件

性差:女性の方が有病率が高い。

頸部痛の原因

身体的要因

姿勢不良、同一姿勢の維持、仕事と勉強の時間、仕事量、職場での体位、

環境要因(職場要因)

努力と報酬の不均衡、同僚のサポート、仕事のコントロールの低さ、ルーチンワーク、意思決定の機会の欠如、労働条件に影響を与える能力の低さ、仕事への満足度の低さ、仕事への高い緊張

心理的要因

ストレス、不安、抑うつ、認知のゆがみ、睡眠障害、社会的支援不足、回避思考

原因疾患

頚椎症:先天性の頸椎管狭窄、頸部変形性関節症、頸部関節炎、外傷、椎間板の摩耗などによって発症する退行性変化。

繊維筋痛症:慢性の広範囲にわたる筋骨格痛と、極度の疲労、睡眠障害、認知機能障害、気分障害などの追加症状を特徴とする疾患。

頸椎神経根症:頸椎の神経根の圧迫または刺激によって生じる頸部疾患の一種で、脊椎症、不安定性、外傷、腫瘍などによって生じる。

関節リウマチ:頸椎の慢性炎症は関節リウマチの2番目に多い特徴であり、関節リウマチ患者の半数以上が罹患。首の痛みは、関節リウマチ患者の頸椎の病変を示す最も初期の症状の1つ

多発性硬化症:頸部の痛みは、不動状態またはレルミット徴候が原因である可能性が考えられている。

強直性脊椎炎:脊椎の関節の炎症を引き起こす進行性関節炎で、炎症により痛みが生じる。

全身性エリテマトーデス:筋肉の炎症により、SLE 患者の頸部や背部に痛みが生じることが考えられている。

頸部痛への介入

非特異的頸部痛患者を対象に、徒手療法の効果を調査したシステマティックレビューでは、徒手療法と運動療法を組み合わせ痛み、機能、治療満足度、全般的な健康状態に関して有効だったことが報告されています[2]。

慢性頸部痛に対する運動療法の効果を調査したシステマティックレビューでは、頸肩甲胸郭および上肢の筋力トレーニング肩甲胸郭および上肢の持久力トレーニング頸部、肩部、肩甲胸郭の強化とストレッチ運動を組み合わせ頸肩甲胸郭強化/安定化運動マインドフルネス運動 (気功)が痛みや機能改善に有効であることが報告されています[3]。

慢性頸部痛に対する認知行動療法の効果を調査したメタ解析では、認知行動療法は疼痛、運動恐怖、不安の軽減に有効だったことが報告されています[4]。

慢性頸部痛に対する経皮的電気刺激療法(TENS)の効果を調査したシステマティックレビューでは、TENSは痛みの改善に有効である可能性がありますが、まだ確実性の低いエビデンスしかないことが報告されています[5]。

頸部痛に対する枕のタイプの影響を調査したシステマティックレビューでは、ゴム製の枕は頸部痛、起床時の痛み、頸部の障害が減少し、満足度が向上したことが報告されています[6]。

慢性頸部痛に対する疼痛神経科学教育(PNE)の効果を調査したメタ解析では、PNEによって疼痛が大きく減少することが報告されています[7]。

頸部痛に対するマッスルエナジーテクニック(MET)の効果を調査したシステマティックレビューでは、急性頸部痛患者の痛み、慢性頸部痛患者の頸部可動域改善に有効だったことが報告されています[8]。

むち打ち関連頸部痛に対する運動療法の効果を調査したシステマティックレビューでは、運動が頸部痛機能障害の改善に有効だったことが報告されています[9]。

おわりに

今回は頸部痛について、概要と介入方法についてまとめました。頸部痛の原因は多岐にわたっているため、介入方法も様々なものがあります。多角的な視点を持って、頸部痛患者さんの治療にあたることが大切です。

参考文献

[1] Kazeminasab, et al. Neck pain: global epidemiology, trends and risk factors. BMC Musculoskelet Disord. 2022 Jan 3;23(1):26.

[2] Hidalgo, et al. The efficacy of manual therapy and exercise for treating non-specific neck pain: A systematic review. J Back Musculoskelet Rehabil. 2017 Nov 6;30(6):1149-1169.

[3] Gross, et al. Exercises for mechanical neck disorders. Cochrane Database Syst Rev. 2015 Jan 28;1(1):CD004250.

[4] Ploutarchou, et al. The effectiveness of cognitive behavioural therapy in chronic neck pain: A systematic review with meta-analysis. Cogn Behav Ther. 2023 Sep;52(5):523-563.

[5] Martimbianco, et al. Transcutaneous electrical nerve stimulation (TENS) for chronic neck pain. Cochrane Database Syst Rev. 2019 Dec 12;12(12):CD011927.

[6] Yiu, et al. The effects of pillow designs on neck pain, waking symptoms, neck disability, sleep quality and spinal alignment in adults: A systematic review and meta-analysis. Clin Biomech (Bristol, Avon). 2021 May:85:105353.

[7] Lin, et al. Pain neuroscience education for reducing pain and kinesiophobia in patients with chronic neck pain: A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Eur J Pain. 2024 Feb;28(2):231-243.

[8] Sbardella, et al. Muscle Energy Technique in the Rehabilitative Treatment for Acute and Chronic Non-Specific Neck Pain: A Systematic Review. Healthcare (Basel). 2021 Jun 17;9(6):746.

[9] Chrcanovic, et al. Exercise therapy for whiplash-associated disorders: a systematic review and meta-analysis. Scand J Pain. 2021 Sep 27;22(2):232-261.

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執筆│宇野  編集│てろろぐ 監修│

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