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痛みを再考する⑤ 薬物療法

痛み、薬物療法、オピオイド|2024.9.6|最終更新:2024.9.6|理学療法士が執筆・監修しています

この記事でわかること
  • 痛みの薬物療法にはオピオイドと非オピオイド鎮痛薬があり、使用には適切な評価が必要
  • 薬物療法は痛みの緩和に有効ですが、副作用や依存リスクを理解することが重要
  • 個々の患者に応じた薬物選択と適切なモニタリングが、効果的な痛み管理に不可欠
3分で読めるよ

序文

薬物療法は、痛み管理の中心的なアプローチの一つであり、急性および慢性の痛みを和らげるために広く用いられています。痛みの種類や程度に応じて、さまざまな薬剤が使用されますが、適切な薬剤選択と投与が行われなければ、副作用や依存などの問題が生じる可能性があります。そのため、リハ職も薬物療法に関する知識は必要となります。

痛みの管理に使用される薬剤

アセトアミノフェン[1]

作用機序

末梢神経系において、痛みの信号が中枢神経に伝わるのを抑制することで、痛みを和らげる効果を発揮します。

副作用

消化器症状、皮疹、肝機能障害など

非ステロイド性抗炎症薬 (NSAID)[2]

作用機序

主にプロスタグランジン合成酵素(COX)を阻害する。

プロスタグランジンは、痛みや炎症を引き起こす物質で、NSAIDがCOXを阻害することで、プロスタグランジンの生成を抑え、痛みや炎症を鎮めます。

COX-1: 体内の恒常性を維持する働きがある酵素です。

COX-2: 炎症反応に関わる酵素です。

従来のNSAIDは、COX-1とCOX-2の両方を阻害するため、胃腸障害などの副作用が出やすいという特徴がありました。近年では、COX-2を選択的に阻害する薬剤も開発されています。

副作用

消化器症状、腎機能障害、肝機能障害、アレルギー反応

NSAIDの種類

イブプロフェン:広範な鎮痛効果があり、解熱作用も強い。市販薬としても広く利用されている。

アスピリン:解熱鎮痛作用に加え、血小板凝集抑制作用がある。心臓病予防にも用いられる。

ロキソプロフェン:鎮痛効果が強く、痛みを素早く抑える。

ジクロフェナク:炎症を抑える効果が高く、関節リウマチなどの治療に用いられる。

セレコキシブ:COX-2を選択的に阻害する薬剤。胃腸への負担が少ないが、心血管系イベントのリスク増加が報告されている。

オピオイド[3]

作用機序

腹外側中脳水道周囲灰白質 (vlPAG)、前部腹内側延髄 (RVM)、脊髄を含む下行性疼痛調節系に作用して痛みを抑制します。

また、オピオイドは情動反応と身体反応を変化させることで鎮痛効果をもたらします。

副作用

便秘、吐き気、眠気、呼吸抑制など。

オピオイドの種類

モルヒネ:ケシから抽出したアルカロイドで、最も代表的なオピオイドです。強力な鎮痛作用を持ちますが、呼吸抑制や依存性のリスクも高いです。

コデイン: モルヒネの誘導体で、モルヒネよりも作用が弱く、咳止めとしても使用されます。

オキシコドン: モルヒネの誘導体で、モルヒネよりも作用時間が長く、副作用が少ないとされています。

フェンタニル: モルヒネよりもはるかに強力な合成オピオイドで、手術中の鎮痛や慢性疼痛の治療に用いられます。

ヒドロコドン:脳内のオピオイド受容体に結合することで、痛みの信号伝達を阻害し、鎮痛効果を発揮します。また、脳の報酬系を活性化し、快感をもたらす作用もあります。

オピオイドは非常に効果的ですが、副作用や依存症のリスクがあるため、厳重な医師の監督下で使用されます。

抗うつ薬[4]

作用機序

セロトニンやノルアドレナリンといった神経伝達物質の量を増やすことで、下降性疼痛抑制系の活動を活発にし、痛みを抑制する。

副作用

口渇、便秘、排尿障害、眼圧上昇および抗ヒスタミン作用による眠気、ふらつきが挙げられます。これらの副作用は特に高齢者で注意が必要です。また、洞性頻脈、脚ブロック、ST及びT波の変化、起立性低血圧などの心機能障害が起こることがあるので、心臓疾患を有する患者にも注意が必要です。

ガバペンチノイド[5]

作用機序

神経細胞の興奮性を低下させることで痛みを抑制する。

副作用

頭痛、複視、けん怠感、けいれん、食欲が異常に増す、よだれが増える、発疹、感情不安定、便秘、嘔吐、尿失禁など

筋弛緩薬[6]

作用機序

筋肉の緊張を直接的に緩和したり、痛み伝導を阻害したり、血流を改善したりすることで、痛みを軽減する。

副作用

ふらつき、めまい、眠気、脱力感、吐き気、食欲不振、腹痛、発疹、痒みなど

コルチコステロイド[7]

作用機序

炎症反応を抑制し、血管を収縮させ、免疫反応を抑制することで、痛み、腫れ、発赤などの炎症症状を軽減する。

副作用

高血糖、消化器症状、眼症状、骨粗鬆症、感染症など。

おわりに

薬物療法は、痛みの緩和において中心的な役割を果たしており、適切な選択と管理が患者の回復に大きく寄与します。しかし、薬物療法には副作用や依存のリスクも伴うため、医療者は常に患者個々の状況を把握し、最適な治療を提供する必要があります。痛みの管理は一筋縄ではいかず、個々の症例に応じた柔軟な対応が求められますが、適切な薬物療法の知識と実践により、より効果的なリハビリテーションが行えると思います。

参考文献

[1] Ennis, et al. Acetaminophen for Chronic Pain: A Systematic Review on Efficacy. Basic Clin Pharmacol Toxicol. 2016 Mar;118(3):184-9.

[2] Ribeiro, et al. Non-steroidal anti-inflammatory drugs (NSAIDs), pain and aging: Adjusting prescription to patient features. Biomed Pharmacother. 2022 Jun:150:112958.

[3] Corder, et al. Endogenous and Exogenous Opioids in Pain. Annu Rev Neurosci. 2018 Jul 8:41:453-473.

[4] Micó, et al. Antidepressants and pain. Trends Pharmacol Sci. 2006 Jul;27(7):348-54.

[5] Alles, et al. Etiology and Pharmacology of Neuropathic Pain. Pharmacol Rev. 2018 Apr;70(2):315-347.

[6] Chang, et al. Muscle Relaxants for Acute and Chronic Pain. Phys Med Rehabil Clin N Am. 2020 May;31(2):245-254.

[7] Stone, et al. Corticosteroids: Review of the History, the Effectiveness, and Adverse Effects in the Treatment of Joint Pain. Pain Physician. 2021 Jan;24(S1):S233-S246.

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執筆│宇野  編集│てろろぐ 監修│

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