脳卒中患者さんでは、50-60%に歩行障害が残存すると言われており、約50%に何かしらのADL動作に介助が必要な状態であることが報告されています(こちら)。
脳卒中の歩行障害では、足関節の背屈筋の麻痺が頻繁に認められますが、背屈筋の麻痺は下垂足の原因となり、遊脚期のクリアランス不良を引き起こすため、転倒リスクを高めます。
下垂足の対策として、ankle–foot orthoses (AFO)の有効性について調査したシステマティックレビューでは、有効である可能性が示されましたが、どの歩行パラメータに効果があるかなど、さらなる調査が必要と結論されていました(こちら)。
今回紹介する論文は「脳卒中患者のAFOは、歩行能力改善に有効なの?」という疑問に応えてくれる論文です(こちら)。
2021年に韓国のChooらの研究チームは、2021年6月までに登録されている19本の論文が解析に含まれました。
結果として、
歩行速度は13本の研究で評価されており、AFOを使用することで改善効果が認められた(SMD=0.50)。
ケイデンス(ステップ/分)は8本の研究で評価されており、AFOを使用することで改善効果が認められた(SMD=0.42)。
歩幅は7本の研究で評価されており、AFOを使用することで改善効果が認められた(SMD=0.41)。
ストライド長は5本の研究で評価されており、AFOを使用することで改善効果が認められた(SMD=0.43)。
ストライド時間(秒)は2本の研究で評価されており、AFO使用による有効性は認められなかった。
TUGは4本の研究で評価されており、AFOを使用することで時間が短縮された(SMD=0.30)。
Functional Ambulation Categories (FAC)は3本の研究で評価されており、AFOを使用しているとスコアが高かった(SMD=1.61)。
体幹動揺は3つの研究で評価されており、AFO使用による有効性は認められなかった。
初期接地時の足関節角度は3つの研究で評価されており、AFO使用は足関節背屈角度の補助に有効であった(SMD=0.66)。
toe-off時の膝関節角度は3つの研究で評価されており、AFO使用により膝関節屈曲角度が増加した(SMD=0.39)。
toe-off時の股関節角度は2つの研究で評価されており、AFO使用による変化は認められなかった。
だそうです。
ただし、いくつかの研究では身体機能や感覚障害、リハビリテーションの内容などが考慮されおらず、研究数も少ないため、さらなる研究が必要だそうです。
AFOは脳卒中患者さんの歩行の様々なパラメータの改善に有効そうですね。
脳卒中ガイドラインでもAFOの使用は推奨されているので、積極的に使用した方が良いかもしれません。ただ、AFOといっても素材や継手など様々な種類と組み合わせがあるので、実際に現場で使用する際には患者さん個々の詳細な評価が必要になってくると思います。