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嚥下理学療法① 嚥下理学療法の概要

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摂食嚥下, 呼吸, 覚醒|2022.1.27|最終更新:2022.1.27|理学療法士が執筆・監修しています

摂食嚥下リハって何?

リハ栄養について、基礎から場面ごとの考え方まで書いてきましたが、今回からは摂食嚥下リハにおける理学療法士の役割についてみていきたいと思います。初回では、摂食嚥下と理学療法の関連の概要をお伝えします。 

※摂食嚥下リハは、チームで行うことが基本です。主治医の指示の下、言語聴覚士さんや看護師さんなど他職種と話し合いながら進めて下さい。

本記事でわかること

✅ 摂食嚥下障害は理学療法の対象でもある

✅ 摂食嚥下機能は全身機能と関連している

✅ 標準的な理学療法は摂食嚥下機能の改善に有効

摂食嚥下リハビリテーションにおける理学療法

「摂食嚥下障害のリハビリテーション」と聞くと、皆さんはどのような印象を持たれるでしょうか?恐らく、言語聴覚士さんが主となって、嚥下訓練を行うリハビリテーションを想像される方が多いと思います。ですが、皆さんが食事をする場面を思い出してください。座った姿勢を維持する、上肢で食器と食具を持つ、食具で食物をつかむ、食物を口まで運ぶなど、食事には飲み込む機能だけではなく、身体全体を使っていることにお気づきになると思います。身体の機能改善は、理学療法士が最も得意とするところです。そのため、摂食嚥下障害のリハビリテーションにおいて、理学療法士が担う役割は大きいと言えます。

日本理学療法連合学会の中に「日本栄養嚥下理学療法研究会(2023年に学会化)」があります。栄養障害や摂食嚥下障害を持つ方に対して、理学療法士が関わる重要性を明らかにし、広めていくことを目的に活動をしています。その中で、摂食嚥下障害に対する理学療法)嚥下理学療法)については、次のような定義がなされています。

「嚥下理学療法とは、障害者やフレイル高齢者の摂食嚥下障害および機能低下によって生じるリスクやQOL低下を予防・改善するために、理学療法士は多職種と連携して摂食嚥下障害、栄養障害の有無を把握し、摂食嚥下機能を阻害する因子を呼吸、姿勢、身体機能などの視点から多角的に評価した上で、状況に適したゴールを設定し、運動療法などの理学療法技術を通じて、摂食嚥下に関わる局所および全身機能、活動、参加、QOLを最大限高めること。」[1]

この定義を見ても分かる通り、摂食嚥下機能には呼吸機能、姿勢調整機能、身体機能といった、理学療法の対象となる機能が含まれています。そして、理学療法士の強みを活かして多職種と連携することも明記されています。このことから、摂食嚥下障害のリハビリテーションには、理学療法士が積極的に関わっていく必要があると言えます。

摂食嚥下と全身機能

先ほど、嚥下理学療法の定義をご覧いただきましたが、摂食嚥下には全身機能が関係しています。この全身機能には、呼吸機能、体幹機能、上肢機能、姿勢調節機能、覚醒状態などが含まれます。全身機能は摂食嚥下機能を下支えする「土台」の役割を担っています。

例えば、呼吸と嚥下には「呼気→嚥下→呼気」のパターンを形成しており、嚥下中は無呼吸状態になります。呼吸機能が正常であれば、何も問題なくこの呼吸と嚥下の協調が行われるのですが、呼吸機能が低下している場合にはどうでしょうか。嚥下をする際に無呼吸状態を保つことができず、嚥下中に吸気をしてしまい、誤嚥してしまうかもしれません。また、嚥下時の無呼吸がクリアできても、嚥下後に呼気ができず吸気になってしまえば、喉頭残留している食物を誤嚥してしまいます。さらに、呼吸機能が低下して咳嗽力が弱くなっていれば、喉頭侵入してしまった食物を咳嗽で排出することが難しくなるため、誤嚥のリスクは高くなります。他にも摂食嚥下に関連する全身機能は多くありますが、詳細は今後書いていきます。

 このように、全身機能は摂食嚥下機能と密接に関係しています。全身機能の評価、介入は理学療法士の得意分野ですので、摂食嚥下リハビリテーションにおける理学療法士の役割は重要と言えます。

摂食嚥下障害に対する理学療法の内容

ここまで、摂食嚥下には理学療法の対象となる全身機能が深く関係していることを書いてきましたが、イメージは掴んでいただけましたか?では、摂食嚥下機能の土台となる全身機能を高めるためにはどのような理学療法を行えば良いでしょうか?嚥下理学療法では特別な手技は必要ありません。理学療法の技術、知識を応用するだけで、十分効果的な介入が行えます

例えば、覚醒状態が不良な患者さんに対しては、覚醒状態の改善を目的に離床を進めたり、介助下で抗重力位にしたりすると思いますが、覚醒状態は食事への認知を高めるために重要なので、覚醒状態に対する介入は摂食嚥下にも効果が望めます。また、脳血管障害の患者さんによく行われている「座位バランス練習」は、安定して食事動作を行えるようにするために有効です。この他にも、摂食嚥下機能に関連する全身機能への介入は複数ありますが、詳しくは今後書いていきたいと思います。

このように、基本動作能力を高めるための運動療法のような標準的理学療法は、摂食嚥下機能の向上に有効と言えます。

おわりに

今回は嚥下理学療法の基本的な考え方について書いていきました。それぞれの詳細については、今後書いていきますので、そちらをお読みいただければと思います。冒頭でも書きましたが、摂食嚥下リハは窒息などのリスクを伴うので、他職種と協働して進めることが大切です。

本記事の執筆・監修・編集者

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✅記事監修(✅編集(てろろぐ

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参考文献

[1] 日本栄養嚥下理学療法研究会ホームページ https://www.jspt.or.jp/jsptns/