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たんぱく質、アミノ酸、代謝|2022.10.28|最終更新:2022.11.01|理学療法士が執筆・監修しています
タンパク質を深掘り
前回は脂質についてみていきました。
今回は、その重要性が広く一般の方にも浸透してきているたんぱく質についてみていきたいと思います。
✅ たんぱく質は生命の維持に必須の栄養素 ✅ 分岐鎖アミノ酸は運動に必須のアミノ酸 ✅ たんぱく質は全身状態や疾患によって必要量が変わる |
たんぱく質の基本
たんぱく質は筋肉だけでなく、生物を構成している全ての部位の原料として重要な働きをしています。
たんぱく質の役割・必須アミノ酸
たんぱく質の役割は、
・新陳代謝の調節
・物質の輸送
・生体防御機能の調節
・生理活性物質の前駆体
・エネルギー源
など、多種多様な働きがあります。
このような多様な働きは、20種類のアミノ酸がそれぞれ相互に作用し合うことで可能となっています。必要アミノ酸には体内で合成できない必須アミノ酸と合成可能な非必須アミノ酸に分類されます。
そのため、必須アミノ酸は常に摂取していないと欠乏状態に陥ってしまいます。一方、非必須アミノ酸も、たんぱく質の摂取量自体が減少してしまえば合成することができませんので、たんぱく質の推奨必要量を満たすような食事を行うことが重要となります。
アミノ酸の種類と働き
先ほど記載したように、アミノ酸は20種類あり、9種類の必須アミノ酸と11種類の非必須アミノ酸に分類されます。必須アミノ酸を摂取する際には、バランス良く摂取することが重要です。
その理由は、摂取量が少ないアミノ酸があると、他のアミノ酸が効率良く吸収されないためです。
アミノ酸スコア
食材に含まれる必須アミノ酸のバランスを示した指標を「アミノ酸スコア」と言います。アミノ酸スコアは最高が100で、100に近いほどその食材に良質なたんぱく質が含まれていることを示しています。
アミノ酸スコアは肉類、魚類、卵、乳製品はほとんどが100で、畑の肉と言われている大豆は86と若干低くなっています[1]。
運動と分岐鎖アミノ酸(BCAA)との関係
アミノ酸はそれぞれが多種多様な働きを有しています。全てを書くと膨大な量になるため、ここでは運動との関連が深い必須アミノ酸の中の分岐鎖アミノ酸(BCAA)についてだけ触れたいと思います。
BCAAは食品中の必須アミノ酸のうち約50%と高い割合で含まれています。BCAAは他のアミノ酸と異なり肝臓で代謝されず、筋肉に運ばれて代謝されます。
BCAAは運動時にエネルギー源として利用されたり、筋たんぱく質の合成を促進したりする効果があります[2]。他のアミノ酸の働きについては書籍等でご確認下さい。
たんぱく質の代謝
では、摂取したたんぱく質はどのように体に吸収されていくんでしょうか。ここでは、一般的な場合と医療者が対象とする患者さんに分けて考えていきます。
一般的なたんぱく質の合成・分解
摂取したたんぱく質はアミノ酸またはアミノ酸が2~3個結合したペプチドの状態まで分解されて小腸上皮から吸収されます[1]。吸収されたアミノ酸は主にたんぱく質の合成に使用されます。
たんぱく質の合成と分解は1日に約300g程度行われており、筋たんぱく質の1~2%で新陳代謝が行われています。
患者さんにおけるたんぱく質の合成・分解
飢餓時、高度の侵襲時、糖尿病で糖質をエネルギー源として利用できない場合などでは、体内のたんぱく質がアミノ酸に分解され、エネルギー源として利用されます。
通常では1日のたんぱく質の必要量は体重1kg当たり0.8~1.0gですが、全身状態によって異なります[2]。
例えば、たんぱく質の制限が必要となる腎不全患者さんでは体重1kg当たり0.6~0.8gが推奨されていますが、サルコペニアを合併している場合には体重1kg当たり1.5gまで許容可能とされています。
また、透析導入されている腎不全患者さんでは、透析によってアミノ酸が漏出するため体重1kg当たり1.0~1.2gが推奨されています。
さらに、肝硬変患者さんではBCAAを補給して肝性脳症を予防、改善する必要があるため体重1kg当たり1.0~1.3gの摂取が推奨されています。
他にも、侵襲時や運動時にはその程度によって必要なたんぱく質量は異なるため、筋肉量などを定期的にモニタリングし、たんぱく質量が不足していないか確認しつつ摂取量を調整することが大切となります。
まとめ
今回はたんぱく質について、一般的な事項をみてきました。たんぱく質は先述したように、20種類のアミノ酸がそれぞれ様々な働きをしているため、ここでは書ききれないほど奥が深いです。興味を持たれてより深く学びたい方は、栄養学についての成書を参照してください。
本記事の執筆・監修・編集者
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参考文献
[1] ニュートリー株式会社. キーワードでわかる臨床栄養.
[2] 一般社団法人日本静脈経腸栄養学会. 静脈経腸栄養テキストブック. 2017