はじめに
急性期の脳卒中患者では、37~78%に嚥下障害が認められ、嚥下障害があると肺炎や低栄養、死亡リスクが高くなることが報告されています[1]。
これまでも嚥下障害のスクリーニング評価の有用性については検討されていましたが、実験的なデータが多く、臨床的なデータは十分ではありませんでした[2]。
今回紹介する論文は「脳卒中患者に対する嚥下障害スクリーニングの有用なの?」という疑問に応えてくれる論文です[3]。
研究概要
2021年にカナダのShermanらの研究チームは2019年12月までに登録されている30本の論文を解析。
対象
対象国:全体の29.8%はヨーロッパ。
対象者数:101~143578人。
脳卒中の分類:虚血性脳梗塞のみ8件、虚血性脳梗塞と脳出血の混在18件、脳卒中分類が不明2件、他の脳卒中が混在2件。
嚥下障害スクリーニングの種類:特定のツールなし14件、既存のスクリーニングツール12件、施設独自4件
スクリーニングのアドヒアランス:18.2~100%。
嚥下障害の有病率:20.5~62.3%。
結果
効果あり | 効果なし |
肺炎(オッズ比=0.57)
死亡率(オッズ比=0.52) 要介護状態(オッズ比=0.54) 入院日数(標準化平均差=-0.62) |
死亡率(ST以外が実施)
入院日数(ST以外が実施) |
ただし、対象者や方法にバラつきがあるため、さらなる研究が必要とされています。
まとめ
脳卒中患者さんに嚥下障害のスクリーニングを行うことは、肺炎や死亡率、ADL能力低下を予防するのに有用のようです。
嚥下障害のスクリーニングは言語聴覚士以外でも行えるツールが開発されているので、言語聴覚士が評価できない状況でも、他職種がスクリーニングを行うことで脳卒中患者さんの予後を改善することができるかもしれません。
参考文献
[1] Martino, et al. Stroke. 2005 Dec;36(12):2756-63.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16269630/
[2] Powers, et al. Stroke. 2018 Mar;49(3):e46-e110.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29367334/
[3] Sherman, et al. J Am Heart Assoc. 2021 Jun 15;10(12):e018753.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34096328/