体幹、姿勢、バランス|2023.3.17|最終更新:2023.3.17|理学療法士が執筆・監修しています
序文
前回までは、食事場面の観察ポイントについて、簡単ではありますがまとめてきました。今回からは、理学療法士として評価すべき、嚥下機能に関連した運動機能の評価方法についてまとめていきたいと思います。
✅ 姿勢保持には様々な能力が必要 ✅ 体幹機能の評価には、網羅的に評価できる方法が有用 ✅ 患者さんに合わせた難易度設定が大切 |
Functional Assessment for Control Trunk(FACT)
FACTは2006年に奥田ら[1]によって開発された体幹機能を評価する評価方法です。全10項目、20点満点で構成されています。検者間信頼性が高く、妥当性も認められています[1]。これらの検査項目は特定の機器を必要とせず、短時間で実施可能なので、臨床でも使いやすい評価方法だと思います。
静的端座位保持
(上肢支持利用) |
上肢で手すりや座面を支持すれば10秒以上端座位保持できる。 | 可能:1点
不能:0点 |
静的端座位保持
(上肢支持不使用) |
上肢で支持せず10秒以上端座位保持できる。 | 可能:1点
不能:0点 |
動的端座位保持
下前方への重心移動、リーチ、抗重力活動 |
左右どちらか片側の手で反対側の足首を握り、戻ることができる。 | 可能:1点
不能:0点 |
動的端座位保持
前方、左右への重心移動 |
両側臀部を持ち上げながら、左右どちらにも10cm以上移動できる。 | 可能:2点
不能:0点 |
動的端座位保持
側方への重心移動 |
片側の臀部を3秒以上座面から離すことができる。 | 両側可能:2点
片側可能:1点 不能:0点 |
動的端座位保持
後側方への重心移動 |
左右どちらかの大腿部を持ち上げ、足底面を床から3秒以上離すことができる。 | 両側可能:2点
片側可能:1点 不能:0点 |
動的端座位保持
後方への重心移動 |
両側の大腿部を持ち上げ、両側足底面を床から3秒以上離すことができる。 | 可能:2点
不能:0点 |
動的端座位保持
側方への重心移動、骨盤体幹機能 |
片側ずつ臀部を持ち上げ、前後どちらにもお尻歩きができる。 | 可能:3点
不能:0点 |
動的端座位保持
体幹伸展位での回旋 |
検者が仙骨部から20cm後方の座面に指を接触させる。それを肩越しに見て、1秒間隔で3回変わる検者の指の本数を答えることができる(手の形を真似できる)。 | 可能:3点
不能:0点 |
動的端座位保持
脊柱の最大伸展 |
左右どちらか片側上肢を最大努力で挙上し、肩関節内外旋、内外転中間位で、上腕骨を床面に対して垂直位まで挙げることができる。 | 可能:3点
不能:0点 |
Trunk Control Test(TCT)
TCTは1990年に開発された評価方法で、ベッド上で実施可能です。4つの項目を3段階で評価します。満点は100点で、歩行能力やADL(FIM)の予後との関連性も認められています[3]。
患側への寝返り | 介助なし:0点
動作可能だが、正常ではない。:12点 正常に可能:25点 |
健側への寝返り | 介助なし:0点
動作可能だが、正常ではない。:12点 正常に可能:25点 |
背臥位からの起き上がり | 介助なし:0点
動作可能だが、正常ではない。:12点 正常に可能:25点 |
座位保持 | 介助なし:0点
動作可能だが、正常ではない。:12点 正常に可能:25点 |
このように評価項目が少なく簡便である一方で、ある程度の能力がある方では天井効果が見られるため、対象者のレベルとTCTの対象となるレベルが合っているのかの確認が必要です。
Trunk Impairment Scale(TIS)
TISは脳卒中後の患者さんを対象として開発された体幹機能評価方法です[4]。評価内容は静的座位保持3項目、動的座位保持10項目、協調性4項目から構成されていて、体幹機能を網羅的に評価することができます。脳卒中患者さん以外でも有用ではないかと思います。評価時間は10分程度です。
静的座位バランス
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1 | 端座位を保持する。 | 0点:上肢支持なしで10秒間保持できない。
2点:10秒以上保持可能。 |
2 | 検査者が非麻痺側下肢を麻痺側下肢の上に組ませる。 | 0点:上肢支持なしで10秒間保持できない。
2点:10秒以上保持可能。 |
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3 | 患者が非麻痺側下肢を麻痺側下肢の上に組む。 | 0点:転倒する。
1点:上肢支持なしでは下肢が組めない。 2点:下肢は組めるが、体幹が10cm以上後傾する。もしくは手で下肢を補助する。 3点:体幹の偏移や上肢の補助なく下肢を組む。 |
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動的座位バランス
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4 | 麻痺側の肘でベッドに一度触れ、開始肢位に戻る。
(麻痺側短縮、非麻痺側伸長) |
0点:転ぶ、上司の補助を必要とする、肘がベッドに触れない。
1点:補助なしで可能。 |
5 | 上記動作を繰り返す。 | 0点:短縮、伸長が行えない。
1点:短縮、伸長が可能。 |
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6 | 上記動作を繰り返す。 | 0点:代償動作がある。
1点:代償動作なし。 |
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7 | 非麻痺側の肘でベッドを触り、開始肢位に戻る。 | 0点:転ぶ。上肢の補助を必要とする。肘がベッドに触れない。
1点:補助なしで肘がベッドに触れる。 |
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8 | 上記動作を繰り返す。 | 0点:転ぶ、上司の補助を必要とする、肘がベッドに触れない。
1点:補助なしで可能。 |
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9 | 上記動作を繰り返す。 | 0点:短縮、伸長が行えない。
1点:短縮、伸長が可能。 |
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10 | 麻痺側の骨盤をベッドから持ち上げる。 | 0点:動作不可。
1点:動作可能。 |
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11 | 上記動作を行う。 | 0点:上肢支持や反対側下肢で代償する。
1点:代償なし。 |
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12 | 非麻痺側の骨盤をベッドから持ち上げる。 | 0点:動作不可。
1点:動作可能。 |
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13 | 上記動作を行う。 | 0点:上肢支持や反対側下肢で代償する。
1点:代償なし。 |
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協調動作
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14 | 頭部を固定したまま、初めに麻痺側を動かし、上部体幹を6回回旋させる。 | 0点:麻痺側が3回動かない。
1点:回旋が非対称的。 2点:回旋は対称的。 |
15 | 上記動作を6秒以内に行う。 | 0点:回旋が非対称的。
1点:回旋は対称的。 |
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16 | 上部体幹を固定したまま、初めに麻痺側を動かし、下部体幹を6回回旋させる。 | 0点:麻痺側が3回動かない。
1点:回旋は非対称的。 2点:回旋は対称的。 |
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17 | 上記動作を6秒以内に行う。 | 0点:回旋は非対称的。
1点:回旋は対称的。 |
おわりに
今回は、摂食嚥下に必要な体幹機能の評価方法についてまとめてきました。この他にも体幹機能を評価する方法は複数ありますので、患者さんの疾患特性や機能レベルに合わせた評価方法を選定することが大切です。
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地域在住高齢者では、70分/回×週2回×16週間の運動介入を行うと、プレフレイルの46%、フレイルの50%がそれぞれロバストやプレフレイルまで改善したそうです。https://t.co/E0fiqzFPr7
— Isao Uno(宇野勲)@リハ栄養学会2023実行委員長 (@isao_reha_nutri) June 2, 2022
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参考文献
[1] 奥田裕、荻野禎子、小澤佑介、他:臨床的体幹機能検査(FACT)の開発と信頼性.理学療法科学.2006; 21(4):357-
[2] Collin C, et al.:Assessing motor impairment after stroke: a pilot reliability study.J Neurol Neurosurg Phychiatry.1990 Jul; 53(7): 576–579.J Neurol Neurosurg Psychiatry.
[3] Franchignoni FP et al.:Trunk control test as an early predictor of stroke rehabilitation outcome. stroke. 1997 Jul;28(7):1382-5.
[4] Verheyden G et al:The Trunk Impairment Scale: A new tool to measure motor impairment of the trunk after stroke.Clinical Rehabilitation.18: 326-334,2004.