下肢慢性創傷患者に必須!血液検査データ5選!

キーワード:#血液検査 #慢性下肢創傷 #糖尿病  (公開日:2021年7月27日)

慢性創傷とは基礎疾患や何らかの事象が原因となって、創傷治癒が正常に進行しない創傷のことをいいます。代表疾患としては糖尿病壊疽重症虚血肢があり、治癒に4週間以上かかる創傷であるとする報告もあります。

合併症も様々であり、臨床ではどの血液検査データを見ればいいの?基準値はわかるけどなんのために見るの?と疑問が湧く場面も多いと思います.

理学療法を行う上でのリスク管理やプログラムに立案に大きく関与すると考えられる検査データを5つあげ、解説しています.

HbA1c (糖尿病患者の場合)

 基本情報

Hb(血色素)とは異なります。HbA1cは血中のHbに血糖がくっついている割合を表す指標です。
そのため、血糖値が高ければHbA1cは上がるのが通常です。

 基準値

 確認が必要な理由

過去1.2か月前の平均血糖値を反映しており、血糖コントロールの指標となるため必要です。しかし、現在の血糖値を知りえる手段とならないため、入院中は随時血糖値や空腹時血糖値の値などと併用して経過を追います

 ここがPOINT!

ただし、HbA1cの値が良くても…
貧血治療中の場合

治療によって新たに血液を生成し、赤血球も新しくなります。そのため、新しくつくられた赤血球には血糖がついておらず、HbA1cの値も必然的に低くなります。

HbA1cがHbからつくられることを考える
血中ヘモグロビンの濃度や他様々な要素に影響されるため、既往歴や他の血液データの指標も併せて確認が必要です。

わかりやすく解説が載っているブログはこちら

血糖値 (糖尿病患者の場合)

 基本情報

主にHbA1cと並び糖尿病の血液検査所見では必須です。
臨床では、随時血糖値空腹時血糖値食後2時間血糖値をよく目にすると思います。
HbA1cの値と違うのは、現在進行形で変化する患者さんの状態を追うことができる点です。

 基準値

 確認が必要な理由

高血糖が続くと好中球の貪食作用が低下し、易感染性となります。感染症では1.21倍疾患別で敗血症2.45倍骨髄炎4.39倍術後感染症2.02倍の感染リスク増大となります。

 ここがPOINT!

〜なぜ感染症が起こるといけないのか〜
感染が生じると病巣周辺の動脈内に
『血栓が生じる → 血流障害 → 皮膚潰瘍形成が拡大』となります。
好中球の貪食作用は250mg/dl以上になると急速に低下するため、感染制御のためにも200mg/dl以下に血糖値を抑える要があります

 理学療法への応用方法

下肢切断患者は5年生存率、再切断率が高くこれを防ぐことも理学療法士として治療を行う上で重要です。

血糖コントロールは自己管理能力の指標となり、早期血糖コントロールが良好な患者は将来の合併症リスクを軽減できることが知られています。


切断部位違いや生存率の違いをまとめた記事はこちら
糖尿病を放置するとこうなる⁉『大切断』と『小切断』の違いとは?

CRP(炎症マーカー)

基本情報

主に炎症の所見として見られます。術直後はCRPは高値となることが多いです。

基準値

 確認が必要な理由

適切な負荷量設定を行う上で、周術期の値の推移をみる必要があります。

ここがPOINT!

CRPは組織崩壊後3~6時間以内に増加し、2~3日目がピークとなると言われています。

Wrightらは血流障害のない、急性外傷や慢性創傷における下肢の再建術後4日目以降にCRP値のピークがある症例は、術後感染を示唆すると報告しています。

単純に高い低いではなく、術後早期がピークではない場合が要注意。EVTなどの血行再建術を行なった後はCRPが上昇することは避けられません。しかし、そのCRP値のピークが術後早期でもなく、術後4日目以降であった場合が注意が必要です。

理学療法への応用方法

~病態に関する理解を深める~
・感染制御が行えているのか。否か。

・大切断につながるリスクの早期発見。
~炎症所見を踏まえたリハビリプログラムの提案~
・大切断の可能性を踏まえた健側の筋力訓練。
・感染拡大を防ぐリスク管理(ミルキング禁止等)の徹底。
・病棟ADLの自立の可能性の有無の検討。

白血球(WBC/炎症マーカー)

基本情報

炎症(主に高値)・感染(主に低値)評価の指標となります。

基本的には白血球の急激な増加は感染の徴候を示すとされます。
しかし、疾患によっては減少している場面に注意すべき場合もあり、白血球数だけを見ても重度の感染とわからないという報告もされています。

基準値

日本人間ドック協会の基準値表より(単位:10³/μL)

確認が必要な理由

・感染などの炎症所見を早期に発見、対応するため。
・抗生剤の静脈投与などが行われる必要がある場合。

ここがPOINT!

Leichterらは足に重度の感染がある多数の糖尿病の検査データを調査し、平均白血球数に変化がないにも関わらず重度の感染を有していることがわかったと報告している。

理学療法への応用方法

感染管理の指標となるが、糖尿病患者の足の感染徴候として、白血球数だけを見ることは必ずしも有意義とはなりにくいため、CRPとの併用が有用です。

CRPと異なるのは急性炎症の値を見られる点であり、メリットとデメリットを理解した上でCRP値の応用方法と同じく、理学療法プログラムの負荷量の調節が大事です。

 アルブミン(Alb)

基本情報

栄養評価の指標となります。
臨床ではCONUTスコア(血清アルブミン濃度、総末梢血リンパ球数、および総コレステロール濃度を使用して計算される栄養状態管理スコア)がよく用いられます。

基準値

確認が必要な理由

患者が感染を含む壊疽および潰瘍を有し、CLIかつHD(慢性腎不全など)でBMIが低い場合。
→創傷治癒のためには栄養が必要であり、Albの値が低値では創傷治癒の遷延化につながりかねないため注意が必要です。

創傷治癒が遷延しないため栄養管理は必須です。必要な栄養素によって、真皮側の線維芽細胞が活性化され、コラーゲンなどの細胞外基質を産生し、良好な肉芽組織を形成します。

Wound Bed Preparation(WBP)の概念に基づき、分子細胞レベルの活性を正常な状態に是正することが慢性創傷の治癒促進につながります。

ここがPOINT!

Furuyamaらによると、血行再建後の潰瘍治癒多変量解析では、皮膚灌流圧比(SPP)の改善が1未満であり、末期腎疾患およびCOUNUT score(>4)であるFontaine分類4の重症虚血肢(CLI)の患者は潰瘍治癒が不完全であることが予測される.また、非切断生存率(AFS)CUNUTスコアが4を超える患者よりも、CONUTスコアが4以下の患者の方が有意に優れている。と報告されています。

そのため虚血性足潰瘍を伴うCLIの管理には、栄養状態の継続的な検討が必要であることがわかると思います。

理学療法への応用方法

栄養が不足しているのであれば栄養士と相談しリハビリ前後の間食を導入することを検討します。
術前の栄養状態を確認しておくことで、患者自身の自己管理能力の判断予後予測の判断材料の1つとして、再切断の可能性を考慮に入れた理学療法プログラムの立案を行います。

 

~病院でもよく使うCUNUTスコアがわからない方は下記参照~

一般的に測定されている検査項目であるアルブミン(ALB)末梢血リンパ球数(TLC)総コレステロール値(T-cho)をスコア化し、三つのスコアを積算して求めたCUNUT値を栄養指標として用いるものです。
CONUT値は蛋白質代謝免疫能脂質代謝という3つの指標を反映したもの。

 まとめ

いかがでしたか?血液検査データを見るのが少しは楽しみになったでしょうか?患者さんのリスク管理や運動療法の介入時間、プログラムの立案は毎日運動に関わる理学療法士が1番気を使うところだと思います。あなたの明日の臨床が少しでも楽しくなり、患者さんのためになることを祈ってます。
臨床に彩りを!

 

今回と関連する記事はこちら

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引用文献

竹内真太 他:血液データを理学療法に活かす-急性期病棟の場合-, 理学療法, 2021. 38 (4), pp.308-315

日本糖尿病学会編著:糖尿病治療ガイド2020-2021. 文光堂, 2020

奈良勲 他:理学療法から診る廃用証拠群. 文光堂. 2014

Leichter SE, Allweiss P, Harley J, et al: Clinical characteristics of diabetic patients with serious pedal infections. Metabolism 1988; 37:22-24 こちら

Furuyama T, Yamashita S, Yoshiya K, Kurose S, Yoshino S, Nakayama K, Inoue K, Morisaki K, Matsumoto T, Mori M. The Controlling Nutritional Status Score is Significantly Associated with Complete Ulcer Healing in Patients with Critical Limb Ischemia. Ann Vasc Surg. 2020 Jul;66:510-517. doi: 10.1016/j.avsg.2019.12.031. Epub 2020 Jan 7. PMID: 31917224. こちら

 今回使用した新規キーワード

Wound bed preparation :

「wound bed preparation (WBP:創面環境調整)」とは、創傷治癒を阻害する要因を取り除き、創傷が治癒するための環境をつくることを意味しており、特に慢性創傷の局所に内在する創傷治癒阻害因子を除去することを指しています。

慢性期の深い褥瘡の局所治療の目標は、初期の「肉芽組織が形成されるための環境づくり」とその後の「形成された肉芽組織が順調に育つための環境づくり」に分けることができ、WBPは初期における基本概念です。

具体的には、「(1)壊死組織の除去、(2)細菌負荷の軽減、(3)創部の乾燥防止、(4)過剰な滲出液の制御、(5)ポケットや創縁の処理を行うこと」と、日本褥瘡学会で定義されています。

上記内容を引用したサイトがこちら

(この記事は理学療法士が執筆・監修しています)