序文(はじめに):届けたいリハが、届けきれないと感じたときに
「新人が増えてきたけれど、誰がどう教えるか決まっていない」
「時間が足りなくて、”ちゃんと育てられてる気がしない”」
そんな現場の葛藤の中で、「教育係をお願いできない?」と声をかけられたとき、うれしさと同時に、不安や迷いが押し寄せてきた経験はありませんか?
教育の専門家じゃない。管理職でもない。
けれど、現場を良くしたいという想いだけはある。
今回はそんな方に向けて、教育係として最初に立ち止まって考えたい「3つの視点」をお伝えします。
1. 「教える目的」を、自分の言葉で持つこと
教育は、「これを覚えてね」とスキルを渡すことだけではありません。
本質は、「この現場で何を大切にして、どう育てていくか」を共有することです。
たとえば、
- リハの質を保ちながら、新人が安心して働けるようにしたい
- 自分が悩んだ道を、少しでもスムーズに越えてもらいたい
- チームで支え合う空気を育てたい
そんな「自分なりの目的」があれば、迷ったときの判断軸になります。
小さな職場だからこそ、その言葉には力があります。。最初は不安でも、意識的に「任せる」「待つ」時間をつくることで、チーム全体が育っていきます。
2. 「一緒に育つ」というスタンスを持つこと
教育係と聞くと、指導する立場というイメージが強くなりがちです。
でも現実には、「自分も不安だし、答えも持っていない」というのが正直なところではないでしょうか。
それでいいのです。大切なのは、
- 「教えること」を通じて自分も学ぶこと
- うまくいかない日があっても、“関わり続ける姿勢”を持つこと
- 分からないことは一緒に考える、対話の土壌を育てること
教育は、“支え合って進む関係性”を築くプロセスです。
「教える側も人間であること」が、相手の安心感にもつながります。関わり方」を意識しておくことが、ぶれないリーダー像につながります。
3. 「仕組みに頼る」ことを恐れない
教育を「根性」と「時間」だけで乗り切ろうとすると、必ずどこかで無理が出ます。
限られた人員、限られた時間の中で成果を出すには、仕組みの力を借りることが不可欠です。
たとえば――
- 動画や資料を活用し、“伝える手間”を減らす
- 週に1回だけでも「振り返りの時間」を固定する
- 育成のステップをリスト化して、「何を・いつまでに」見える化する
「人が頑張る」ではなく、「仕組みで支える」。
それは、教える人・教わる人のどちらも守ることにつながります。
まとめ
小さな職場における教育は、担当者1人に重たくのしかかることがあります。
だからこそ、自分で背負いすぎない工夫と小さな仕組みが必要です。
まずは、自分なりの目的を持つこと。
そして、「一緒に育つ関係性」と「仕組み」をつくること。
その一歩から、現場の教育は変わりはじめます。
あなたの不安と誠実さは、きっと誰かにとっての安心になるはずです。
参考文献
Rose T. Dunn: Dunn and Haimann’s Healthcare Management, Eleventh Edition



