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【歩行・初期接地】膝折れの要因?踵接地ができない人が押さえるべきポイント

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評価, 動作分析, 歩行|2020.11.21|最終更新日:2022.03.12|この記事は理学療法士が監修・執筆しています

 

踵接地の重要性

リハで歩行練習を行う際、患者さんに「足をつく際は、踵からつくのを意識してください」と声掛けを行う場面よくありませんか?

僕も入職してすぐの頃、先輩方が「踵からついてくださいね~」と言っているのを聞いて、踵接地が上手くできていない患者さんに、同じように踵からつくように意識するようによく伝えていました。

では踵接地を意識すると何が良いのでしょうか?

今回は踵接地を意識して行うことでどのような効果あるのか紹介していきます。

踵接地とは

踵接地という言葉は従来方式と言われており、現在はランチョ・ロス・アミーゴ方式による初期接地と呼ぶ場合が多いです。今回は踵の接地に重点を置くため、記述を踵接地にて統一させていただきます。

基本的に健常人は必ず踵から接地すると言われており1)、踵接地(初期接地)~荷重応答期にかけての時期は、
歩行周期の中で最も大きな衝撃が身体に加わる場面でもあると言われています。

そのため、適切な衝撃吸収・身体重心の前上方への加速が必要な時期であると述べられています2)

踵接地時の各関節角度

まずは踵接地時の下肢の関節の角度から紹介します。

股関節屈曲20~30°

膝関節 屈曲0~5°

足関節 背屈0°

という角度で踵接地は行われています3)。大きく足関節を背屈する必要がないのが私も初めて知った時驚いたポイントです。むしろ膝が伸びるのが重要となっています。

踵接地時の衝撃吸収作用

正常歩行では、踵接地後、0.02 秒で身体重量の約 60%が接地脚に加重される4)といわれており、衝撃吸収が上手く行われないと、関節や臓器、脳にもダメージがいってしまいます。

では踵接地後の衝撃吸収はどのように行っているのでしょうか?

 

①足関節背屈筋:フットスラップの防止

踵から接地すると、床反力は足関節の後方を通過するため、足部は床反力によって底屈させられようとします。その際に足関節背屈筋が遠心性収縮を行い、ゆっくりと前足部を床に接地させます。この遠心性収縮が上手く働かないと、初期接地後、ドン!と足底が接地してしまうフットスラップが起こってしまいます1)

そのため、衝撃吸収の為には足関節背屈筋の遠心性収縮が必要になります

 

②足関節背屈筋+大腿四頭筋:膝折れの防止

また、この足関節背屈筋にはまだ作用があります。足関節の底屈に対しブレーキをかけるだけでなく、下腿を前方に回転させ膝関節の屈曲を起こします。この際、大腿四頭筋が遠心性収縮を起こし膝の屈曲にブレーキをかけ、衝撃吸収を行うとされています3)

したがって、大腿四頭筋の遠心性収縮が上手くできないと膝折れにつながってしまいます。

足関節の可動域を下肢装具にて制限して歩行を行った場合、衝撃の割合は有意に増加したのに対し、大腿直筋の活動の増加は見られなかった等、衝撃吸収においては特に足関節が重要な可能性があるという知見もあります5)

これが片麻痺等前足部から接地となると、床反力は足関節の前方を通り、膝の伸展筋群の衝撃吸収もうまく行えず、接地時に大きな衝撃が加わってしまいます1)

 

踵接地による身体重心の加速について

次に身体重心の前上方への加速について紹介していきます。

前上方への加速の為に踵接地後大切になるのが、皆さん一度は聴いたことのあるロッカー機能です。

ロッカー機能とはペリーによって提唱され6)

・ヒールロッカー

・アンクルロッカー

・フォアフットロッカー

の3つがあります。今回は踵接地後に使用されるヒールロッカーについて紹介していきます。

 

 踵接地とヒールロッカー

ヒールロッカーの役割は、
前方に進みながら落下してきた重心を受け止めて上方に持ち上げ、アンクルロッカーへ繋げることです。
踵から接地することで床反力ベクトルは足関節と膝関節の後方を通し、下肢前面筋の遠心性収縮によって重心を持ち上げています7)

また、ヒールロッカーは3つのロッカー機能の中で唯一関節ではないところに回転軸があり、関節運動ではありません。踵接地時に活動するほとんどの筋が遠心性収縮を行っているため、関節回りで前方への回転運動を作ることはできません。

そのため、関節ではない踵によって前方への回転を行っています3)

さらに足関節の可動域を下肢装具にて制限して歩行を行った場合、前脛骨筋の筋活動量が低下、前進運動へのエネルギー変換も低下したことが報告されています5)

 

まとめ

今回は踵接地について紹介させていただきました。

他にも、
・変形性股関節症では踵接地を意識させた歩行訓練は運動単位の活動状態を変化させ,中殿筋のトレーニングとして有効である可能性がある8)。
・片麻痺では踵接地を意識することで下腿三頭筋の活動を抑制し、膝の過伸展が軽減した7)
とも述べられています。

今回の記事で、踵接地の重要性について理解していただけたら幸いです。

 

✅記事編集(てろろぐ)・監修(幸代表

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参考文献

1)江原義弘:歩行分析の基礎-正常歩行と異常歩行-.日本義肢装具学会誌.2012;28.1.57-61.

2)市橋則明:身体運動学 関節の制御機構と筋機能. 東京: 株式会社メジカルビュー社; 2017.

3)石井慎一郎: 動作分析 臨床活用講座 バイオメカニクス基づく臨床推論の実践.東京: 株式会社メジカルビュー社; 2013.

4)古谷 友希,柊 幸伸:正常歩行の下肢衝撃吸収機構における 足関節機能の検討.理学療法学.2017;32.6.835-838.

5)菅澤 昌史, 山口 智史,他:足関節運動制限が歩行初期接地時の衝撃吸収機能に与える影響.理学療法学.2012;39:94.

6)Perry J:ペリー歩行分析 正常歩行と異常歩行.武田 功・ 他(監訳),東京,医歯薬出版; 2007.

7)山本澄子:歩行障害のバイオメカニクス.理学療法学.2015;42:8:634-635.

8)術後股関節疾患患者に対する踵接地を意識させた歩行訓練が股関節外転筋活動に及ぼす影響 ─表面筋電図による積分筋電図及びwavelet周波数解析─.理学療法科学.2012;27.4.479-483.