今日からできる!下肢に対する評価~糖尿病・末梢動脈疾患編~ 

#糖尿病 #末梢動脈疾患 #評価 #下肢慢性創傷                        (公開日:2021/08/29)

あなたが何気なく行う評価…それってなんのためにしてますか?
評価した数値が今後どんなリスクや身体機能につながるか知ってますか?

評価の取捨選択は限られた単位の時間内で理学療法士にとって必要な能力ですよね。
でも日々の業務は色んな雑事におわれて、病院や病棟のルールにしたがってマニュアルに沿ってとりあえずとってる〜なんて人も多いのでは?

そんなあなたに朗報です!
この記事を読むだけで下肢慢性創傷患者さんに対するよくある評価を理解できちゃいます
担当患者さんの評価の意味に悩んでる方は一見の価値がありますのでぜひどうぞ。

これを見れば明日からの臨床は少し明るくなるかも…。

では詳しい解説です!!

関節可動域

下肢関節の屈曲・伸展可動域はこちら!

下肢関節評価表.股関節屈曲伸展.膝関節屈曲伸展.足関節底屈背屈.母趾屈曲伸展.足趾屈曲伸展IP.MTP.PIP.DIP.

糖尿病(DM)患者さんや閉塞性動脈硬化症(ASO)患者さんは下肢関節可動域に制限が多いことがわかっています。

ここでは疾患別に見るべき下肢関節とその理由を説明します。

あなたの担当が糖尿病疾患患者の場合…

Q1.なぜ足関節背屈制限が起こるの?
あなたも担当患者さんに糖尿病の既往をもった患者さんはいらっしゃると思います。
関節可動域制限はさまざまな理由で生じることが考えられますが、糖尿病患者さんだから制限が生じている可能性があります。
Emanuela D’Ambrogiらは、糖尿病罹患患者は足底筋膜肥厚を示し、中足骨指節関節の可動域と逆相関の関係が見られたとあり、糖尿病患者の軟部組織に与える影響が示唆されています。

Q2.角度が制限されるデメリットってなに?
ここまで考えるとなんで角度制限が悪いことなの?具体的にどんな悪影響があるの?と考えると思います。その疑問に対する1つの答えとなるのが、こちらです。
河辺らの論文では糖尿病患者の背屈制限があると足底圧の上昇につながるとされており、A Searle ら海外の文献でもその論拠は示されています。

Q3.関節可動域に対するストレッチには可動域改善の効果があるの?
制限があるのはわかりましたが、どう改善すればいいんでしょうか?
足関節のストレッチは関節可動域を改善できるのだろうかと思いますよね…

Angela Searleらは、高齢の糖尿病患者に対して8週間の静的ストレッチを行っても効果に有意差は見られなかったという論文があります。

このことから、可動域改善に対してアプローチする場合は違う方法を模索するべきかもしれません…
また、効果的な方法があれば紹介させていただきますね!

あなたの担当が末梢動脈疾患患者(PAD)の場合…

Q1.PADの股関節に対する影響って?
Shing-Jye Chenらでは、PAD患者を跛行痛の有無に分け、健康な群と3群で比較しています。健康群と比較して股関節と足関節で有意な角速度と内部モーメントの変化を示しており、無痛時と比較して有痛時では立脚後期に足関節底屈筋のピークモーメントが減少していると報告しています。

Q2.なぜ屈曲に注目するべき?
末梢動脈疾患(PAD)患者の間欠性跛行は死亡リスクの増加と関連していることが知られています。
Takaaki Kakihanaらは、股関節屈筋がPAD患者の運動トレーニングに有用な標的であることを示唆しています。
このことからもPADは股関節や足関節に影響を及ぼすことがわかります。関節可動域も疾患別に見るべきポイントを把握して見てみてください!

WBI(weight bearing index:筋力評価)

WBIの必要性

WBIという評価基準をご存知でしょうか?

脚伸展筋力÷体重=WBI

上記の計算式を元に、膝関節伸展筋力を指標とした歩行レベルの推定値を出すことができるものです。
下記に記載しているのは論文内容の抜粋です。WBIの値と実際の歩行レベルを比較検討しており、臨床での応用は比較的しやすいと思います。

WBIの基準値に関する論文より
◎院内歩行自立群は0.43を下回る場合、歩行自立例の割合は減少し始め、その下限値は0.28であった。
室内歩行を含んだ検討では筋力が0.30を下回る場合歩行自立割合は減少し始め、その下限値は0.13であった。
黄川ら正常歩行に必要な筋力水準を0.40以上と報告している。

上記のような結果がでていることからも臨床での有用性がわかると思います!

MMTとの違い・メリットとデメリット

両者の違い
MMTは検査者の簡便ではありますが主観的な評価となり、客観的な指標ではありません。WBIの場合ハンドヘルドダイナモメーター等を使用し、数値化した値をレベル分けするため客観性の高いデータとなります。

メリット
・医師からの安静度の制限など歩行ができない場合、膝関節伸展筋力をもとに現在の推定の歩行レベルを算出できる点。
・もし四頭筋筋力が基準値に達しているのに歩行が上手くいかないのであれば、歩行を阻害する要因は他にあるのではないか?と考えられる点。


デメリット
・MMTなどと比較すると簡便性に欠ける点。
・あくまで四頭筋評価でしかなく、他の障害や個人因子、環境因子を加味すれば歩行可能かは不明である点。

感覚評価(主として糖尿病患者対象)

なぜ感覚検査をするの?

Semmes Weinstein モノフィラメント検査

〜①概要と②実施すべき理由〜
①使用するモノフィラメント:5.07 / 10g、
 母趾足底面/第3中足骨頭/第5中足骨頭のいずれかが不可
②足部潰瘍の絶対リスクと相対リスクに関しては、Yuzhe Fengらにて下表のような結果が示されています。


Q1. 陽性患者の絶対リスクとは…

陽性判定後その後の生活での潰瘍発生リスクが12.4%〜38.6%高くなるということ。
Q2. 陰性患者の絶対リスクとは…

逆にいえば陰性でも2.5%〜10.7%まで潰瘍リスクはあるということ。
Q3. 陰性患者と比較した陽性患者の足部潰瘍となる相対リスクとは…

潰瘍発生率が検査後陰性群と比べて検査後陽性群は、2.5倍〜7.9倍高いということ。

Q4. 陰性患者と比較した陽性患者がLEAとなる相対リスクとは…
論文内でもSWMEによって大切断と小切断の予測は難しいとされています。
しかし、
SWMEが陽性となった場合、表のようにLEAとなる相対リスクは陰性患者の1.7倍〜15.1倍高いことからも必要性がわかると思います。

※感度=病気がある群での検査の陽性率 特異度=病気がない群での検査の陰性率


Q5. 神経伝導検査 (NCS)と比べてモノフィラメント検査の特異度と感度って?

神経伝導検査 (NCS) は糖尿病神経障害に対する感覚検査のゴールデンスタンダードと言われています。
そのNCSと比較した上表をみても、その感度や特異度の高さがうかがえると思います。

相対リスクと絶対リスクを詳しく理解したい方はこちらのブログを参考にしてみてください。

Ipswitchタッチテスト

〜①概要と②実施すべき理由〜
糖尿病患者に対して1・3・5趾のつま先先端に軽く触れる
②感度と特異度を10gモノフィラメント検査、25V以上の振動知覚テストと比較した場合の結果がArnold Huらによって論文に明記されています。

他の感覚検査と比較しても感度・特異度が高く、感覚異常の検出ツールとして有用であることがわかります。

Ipswitchタッチテストはマイナーなテストではありますが、簡易的かつ糖尿病神経障害に起因する感覚異常に対して有効であり、臨床でも積極的に使用してみてください!

※感度=病気がある群での検査の陽性率 特異度=病気がない群での検査の陰性率

感度と特異度を理解したい方はこちら
COVID19のワクチンの効果判定にも通じる部分があるので、理解しておくと正しい知識を得るための一助になるかもしれません!

足圧評価

必要なの?なんのため?

足圧評価に関してはもっと掘り下げていきたいので、
また次のblogでお話させていただきますが今回はそのイントロだけ…

糖尿病患者さんは足部の状態を目で見て確認する必要があります。
なぜ足を見るのかというと、糖尿病神経障害による外傷性の影響や、血流状態の悪化によるチアノーゼ、感染兆候の有無など足から得られる情報は莫大だからです。

その一つに足底圧の上昇による潰瘍形成があります。
そのため、足圧を評価し、どこの部位にどれだけの負荷がかかっているのかを把握することは重要なのです。

一般に足底に6kg/cm²の負荷がかかることで潰瘍を形成生じると言われています。
R G Frykbergらによる海外被検者を対象とした論文であることもあり、一概に日本人に当てはめることはできませんが足底圧の重要性はわかると思います。

だからこそ理学療法士は足を確認できる目を養う必要がありますし、足の異常を理学療法士ができる範囲で防ぐ役割も担う必要があるのです。

まとめ

いかがでしたか?
評価の意味を理解したら、すこーしでも評価をするのが楽しみになってきませんか?
ここで紹介させていただいたのは、あくまで疾患別における研究結果です。あなたの担当患者さんにがっちりはまるような方はいないかもしれません。

でも、自分の実施する評価に少しでも自信を持てたり、評価を楽しみに感じてきたのなら、筆者冥利に尽きます!

一緒に頑張りましょうね!臨床に彩りを〜!

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【この記事は理学療法士が監修・執筆しています】