序文(はじめに)
PT・OT・STが協働する医療や介護の現場では、「チームの雰囲気がいいこと」が、仕事の質にも直結します。
しかし、忙しい毎日の中で関係づくりを後回しにしてしまい、
- 情報共有がうまくいかない
- 声をかけづらい空気がある
と感じることもあるのではないでしょうか。
そんな時こそ活用したいのが、チームビルディング活動です。
単なるレクリエーションではなく、「同じ目的に向かって進む仲間としての絆」をつくるための時間として位置づけることで、現場に確かな効果をもたらします。
1. なぜ“目的の共有”が大事なのか
チームビルディングを企画すると、「みんなでワイワイやって楽しかった」で終わってしまうことがあります。
確かに雰囲気は良くなるのですが、それだけだと日常の業務にうまくつながらないケースも多いものです。
本当に現場の力を高めるためには、「私たちは、何のためにこの活動をしているのか?」という目的の共有が不可欠です。
たとえば、
- 「多職種間の理解を深め、連携しやすくする」
- 「普段話す機会が少ないスタッフ同士の関係をつくる」
- 「チームの共通目標を言語化する」
こうした背景の言語化をあらかじめ行い、メンバーにも共有しておくことで、参加の姿勢が変わり、活動がより意味あるものになります。見えるようにすることが大切です。
2. 目的に沿ったチームビルディングの工夫
チームビルディングと聞くと、特別な企画をしなければと思いがちですが、ちょっとした工夫でも十分効果があります。
ここでは、目的別に3つの実践例を紹介します。
① 多職種の連携を深めたいとき:「他職種の視点ワーク」
ケースを元に、PT・OT・STそれぞれが「自分なら何を考えるか」を共有する。
違いを知ることにより、連携が具体的にイメージしやすくなります。
② 雰囲気をよくしたいとき:「名前ビンゴ+一言紹介」
簡単なゲームを通して、「話しかけるきっかけ」をつくる。
交流が少なかった人とも関係ができることで、声かけのハードルが下がります。
③ チームの目標を整えたいとき:「チームの未来を描くワーク」
「半年後、今よりもっといいチームにするには?」をテーマに、理想の状態を絵や言葉で表現する。
メンバー同士の価値観をすり合わせる機会になります。
3. 活動後が“本番”——日常へのつなぎ方
チームビルディングは、やって終わりでは意味がありません。
活動後にこそ、「何を感じたか」「明日からどう関わっていくか」を言語化する時間をとることが大切です。
たとえば、
- 最後に一言ずつ感想を共有する
- ホワイトボードに「今日の気づき」「明日からやってみること」を書く
- 後日、日常の現場での変化を振り返るミニミーティングを設定する
こうした工夫で、活動が“点”で終わらず、“線”として日常に生きてくるようになります。
まとめ
チームビルディングは、単なるイベントではなく、「同じ目的に向かって進む仲間意識」を育てるための大切な機会です。
だからこそ、「なぜやるのか?」を共有し、日常の関係性や行動につなげる工夫が求められます。
小さな一歩でも、意識して取り組むことで、チームの空気は確実に変わっていきます。
若手リーダーの皆さんが、関係づくりの旗振り役となって、現場に温かい風を吹かせてくれることを期待しています。。
参考文献
Rose T. Dunn: Dunn and Haimann’s Healthcare Management, Eleventh Edition