序文(はじめに)
リーダーシップは、理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)にとっても欠かせない要素です。しかしリーダーシップと聞くと、「自分には人を引っ張る力はない」「声高に意見を言うのが苦手」など、画一的なリーダーシップに戸惑われます。そのため、多くの方が成果を出すことができず、「自分はリーダーに向いていない」と誤解しています。そんなことはありません!そこで今回は、リーダーシップの基本である、状況対応型リーダーシップについて解説します。
状況対応型リーダーシップとは
状況対応型リーダーシップはその名の通り、チームメンバーのスキルや状況に応じてリーダーシップのスタイルを変化させる方法です。状況対応型リーダーシップには、指示型、指導型、支援型、委任型の4つがあります。それぞれの詳細は、後ほど解説いたします。
状況対応型リーダーシップを導入することにより、次のようなメリットが得られます。
- 個々の成長を促進
メンバーのスキルに合わせてリーダーシップのスタイルを調整することで、各メンバーが無理なく成長できる環境を作り出します。 - チームの自律性が向上
メンバーが成長するにつれ、リーダーの関与を減らし、自律的に業務を進めることができるため、全体の生産性が向上します。 - 柔軟な対応が可能
状況に応じて指示やサポートの度合いを調整できるため、急な変化や問題が発生しても、最適なリーダーシップを発揮できます。
では状況対応型リーダーシップを構成する4つの型について、解説します。
1. 指示型リーダーシップ
指示型リーダーシップは、特に経験が浅いメンバーや新しい環境に適応していないメンバーに効果的です。このスタイルでは、リーダーが具体的な指示を与え、業務の進め方を詳細に教えることで、ミスを防ぎながら確実な業務遂行を促します。PTやOT、STの新人が新しい治療法や手技を学ぶ段階では、この指示型のリーダーシップが必要です。多くの方がこの型だけを、リーダーシップと誤解しています。
- メリット:明確な指示により、業務が滞ることなく進行し、メンバーが安心して業務に取り組める
- 適用場面:新人教育や、新しい施術方法を導入する際
2. 指導型リーダーシップ
次に、メンバーが業務に慣れ始め、一定の自己判断ができるようになってきた段階では、指導型リーダーシップが適しています。このスタイルでは、リーダーがメンバーにフィードバックを与えつつ、自発的な判断を促します。メンバーが業務に対する実施計画を提案し始める段階で、リーダーが助言やサポートを行い、メンバーの自信を引き出します。最近流行りのコーチングは、このタイプと言えます。
- メリット: メンバーが自己成長を感じられるため、モチベーションが高まる
- 適用場面: 自信が芽生え始めたメンバーが自己判断を行い始める段階
3. 支援型リーダーシップ
支援型リーダーシップは、メンバーが自分の業務を理解し、自立して行動できるようになってきた段階で用います。リーダーはあまり指示を出さず、チームの士気を高めるためにサポートを提供し、必要なときに助言を行います。この段階では、リーダーは信頼を持ってチームを見守り、メンバーの自主性を尊重します。一時期流行りました、サーバントリーダーシップはこの型です。
- メリット: 自立的なメンバーに自己判断の余地を与えることで、責任感と業務への満足感を高める
- 適用場面: 経験豊富なメンバーが自信を持って業務に取り組み、リーダーがバックアップとして存在する
4. 委任型リーダーシップ
最後に、メンバーが高度なスキルを持ち、完全に自立できる段階では、委任型リーダーシップが最適です。このスタイルでは、リーダーがメンバーにほぼ全ての権限を委任し、必要に応じて助言やリソースを提供します。リーダーは細かく指示を出すことなく、メンバーが独立して業務を遂行できる環境を整えます。最近よく聞く、フォロワーシップがこの型に近いかもしれません。
- メリット: メンバーの自主性を最大限に引き出し、チーム全体が効率的に動くことができる
- 適用場面: 経験豊富なメンバーが自分のペースで業務を進め、リーダーがサポートを最小限にとどめる場合
まとめ
いかがでしたか?状況対応型リーダーシップは、チームメンバーのスキルや状況に合わせて、最適なリーダーシップスタイルを柔軟に取り入れることで、チーム全体のパフォーマンスを引き出す強力なアプローチです。ご自身の状況に合わせて、取り入れてみてください。
参考文献
Rose T. Dunn: Dunn and Haimann’s Healthcare Management, Eleventh Edition