人工呼吸器とは関連しない院内肺炎(NV-HAP)は、最も一般的な院内感染と言われています。
2018年にアメリカのGiulianoらの研究チームの119075人を対象とした調査では、入院患者のNV-HAP発症率は1.6%であり、入院費、入院期間、死亡率が増加したことを報告しています(こちら)。
しかし、NV-HAPの予防に有効な方法は明らかになっていません。
今回紹介する論文は「NV-HAPの有効な予防方法は?」という疑問に応えてくれる論文です(こちら)
2019年にオーストラリアのMitchellらの研究チームは、2018年8月までに登録された15本の論文を解析しています。
口腔ケア、嚥下障害スクリーニング、身体活動が主に行われていた介入でした。
結果として、
- 歯科医または歯科衛生士が行う口腔ケアは、2/4本の論文で有効性が認められた。
- 歯科医または歯科衛生士以外が行う口腔ケアは、4/5本の論文で有効性が認められた。
- 嚥下障害スクリーニング検査は、2/2本の論文で有効性が認められた。
- 身体活動は、3/3本の論文で有効性が認められた。
だそうです。
ただし、NV-HAPの診断方法や介入方法にバラつきがあるため、さらなる研究が必要だそうです。
結果をまとめますと、
- NV-HAPの予防には、口腔ケア、嚥下障害スクリーニング、身体活動が有効。
ということになります。
臨床現場では当たり前と言えば当たり前のことですが、それを科学的に証明したというのは大きいと思います。
口腔ケアも、歯科衛生士さんなど専門家に頼らず誰がやっても効果があるというのは、口腔ケアを普及させる上で大きいと思います。
病院や施設では、マンパワーが足りずに口腔ケアが疎かになってしまうことが少なくない印象がありますので、肺炎予防という意識を持てば、口腔ケアの優先度が上がるのではないかと思います。
理学療法士の視点で言えば、早期に離床を進めることの重要性が改めて証明されたということが大きいですね。
肺炎高リスク患者は低栄養であることが多く、低栄養を理由に離床を躊躇する人がいますが、離床が肺炎を予防し、低栄養の進行を予防できるという意識を持つことが必要ではないかと思います。