バランス能力が障害されると、歩行やADL能力改善の阻害因子になります。
頸部背側の筋に振動刺激を加えると、バランス能力が向上することが報告されています(こちら)
このように、頸部筋への振動刺激(NMV)がバランス能力改善に有効である可能性が示唆されていますが、そのメカニズムについては明らかになっていませんでした。
今回紹介する論文は「頸部筋振動刺激はバランスにどう影響するの?」という疑問に応えてくれる論文です(こちら)
2019年にフランスのJamalらの研究チームは、2016年7月までに登録されている67本の論文を解析しています。
結果として、
姿勢定位に対しては、両側NMVは前方への偏位を誘発した。
片側のNMVは、振動刺激を加えた反対側に身体を偏位させた。
視覚への影響では、片側のNMVは振動の反対側に視覚的注意を偏位させた。
空間的認知では、振動刺激を受けた側に向かって主観的な「前方」の意識および垂直軸が偏位した。
これらの結果は脳卒中患者や前庭機能障害患者でも観察された。
だそうです。
ただし、研究間にバラつきがあり、バイアスリスクも高かったため、さらなる研究が必要だそうです。
結果をまとめますと、
NMVは姿勢定位、視覚的注意、空間認知に影響を与える。
ということになります。
整形疾患患者でも、頸部や肩甲帯周囲だけでなく、腰部や下肢でも片側性に何かしらの問題を有している場合、姿勢定位や空間認知が変化していることは少なくありません。
NMVのような簡単で誰でもできる方法が有効なのであれば、現場でも活用しやすいのではないかと思います。