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【歩行分析】股関節の伸展制限があるとどうなる?

歩行、股関節 、TLA|2026.3.13|最終更新:2026.3.13|理学療法士が執筆・監修しています

この記事でわかること
  • 股関節伸展制限は、終末立脚期の「後ろ脚の残り(Trailing Limb Angle:TLA)」を小さくし、推進力が低下する
  • 股関節伸展制限は骨盤前傾や腰椎伸展などの代償が増やす
  • どこで代償しているかの観察が重要
3分で読めるよ

序文

歩行の「終末立脚期〜前遊脚期」で股関節がしっかり伸びると、後ろ脚が“残る”ことで推進力が作りやすくなります。ところが股関節伸展が制限される(股関節屈筋群の短縮、前方関節包の硬さ、疼痛回避など)と、この“伸び”を使えず、歩き方はかなり典型的に変化します。若手療法士が臨床で見立てやすいように、何が起きるか→なぜ起きるか→どこを見るかで整理します。

推進力が落ちて、歩幅と速度が伸びにくい

1) 何が起きる?(歩き方の見え方)

立脚後期に大腿が後ろへ十分に行かない(股関節が伸び切らない)

後ろ脚で押して前へ進む感じが弱い

結果として、歩幅(ストライド)が小さく、速度を上げるときはケイデンス頼みになりやすい

2) なぜそうなる?(根拠)

高齢者では、若年者より股関節伸展角度が小さく、股関節伸展ROMが歩行パターンの制限要因になり得ることが示されています。[1]

推進力(前方への床反力)は足関節だけでなく、TLA(後ろ脚の残り)にも強く関係し、速度を上げる際にTLAの変化が大きく寄与することが報告されています。[2]

脳卒中後歩行でも、推進力とTLAが長距離歩行能力に関わる重要因子になり得ます。[3]

さらにTLAは、前方床反力(推進に関わる指標)の“代替指標”として扱える可能性が示されています。[4]

3) ここを見る(観察ポイント)

立脚後期:踵離地が極端に早くなって“終末立脚期を短縮”していないか(逃げ方のサイン)

側方から:終末立脚期に「脚がどれだけ後ろに残るか」(TLAっぽい見え方)

速度を上げたとき:歩幅が伸びるか/回転数だけ増えるか

骨盤前傾・腰椎伸展など「体幹側の代償」が増える

1) 何が起きる?(見え方)

骨盤前傾が強い(立脚後期でさらに前傾が増えることも)

腰椎前弯(反り)が増えやすい

股関節が伸びない分、骨盤+腰椎で“見かけの伸展”を作る

2) なぜそうなる?(根拠)

「股関節伸展が出にくい→骨盤前傾や腰椎前弯で補う」という考え方は、歩行・走行の股関節‐骨盤協調の研究背景としても扱われています。[6]

実際に、骨盤傾斜を変えると腰椎前弯角が変化することが示され、骨盤前傾が増えるほど腰椎前弯も増えやすいメカニズムが裏付けられています。[7]

股関節屈筋のストレッチ後に前傾骨盤が平均で減少した報告もあり、「屈筋群の短縮→前傾骨盤」の関係を臨床推論に組み込みやすいです(※腰椎前弯が必ず変わるとは限りません)。[8]

3) ここを見る(観察ポイント)

痛み:代償が強い人ほど、腰部や股関節前方に負担が集まりやすい(訴えの部位と動作の対応を見る)

側方から:骨盤前傾(ASISが前下方へ落ちる)と体幹前傾(胸郭ごと前へ倒れる)を分けて観察

立脚後期:肋骨が前に開く/腰が反る動きが増えていないか

下肢全体で“つじつま合わせ”が起きる

股関節が伸びないと、身体は「前に進む」ために他の場所で帳尻を合わせます。ここを見抜けると、歩行分析が一気に楽になります。

1) よくある代償パターン(臨床で頻出)

歩幅を小さくして安定優先(特に反対側のステップが伸びにくい)

骨盤回旋で“脚が後ろに行ったように見せる”

終末立脚期を短くして逃げる(早めの踵離地、支持時間の変化など)

2) なぜそうなる?(根拠)

股関節屈曲拘縮(=伸展の出にくさを含む)は、さまざまな疾患背景で姿勢・歩行パターンを歪めることが示されています。[9]

また最大一歩幅のような「大きく一歩を出す能力」は、膝・股関節伸展の速度・筋力・パワーと関連します。[10]
 → つまり、伸展ROMが足りない/疼痛で伸展を避ける/伸展筋群の出力が弱い、いずれでも「歩幅が出ない」は起こり得るため、“ROM・痛み・筋機能”のどれが主因かを切り分けるのがコツです。

3) 評価の順番

静的に:トーマステスト(変法含む)で他動伸展の余裕を確認(骨盤前傾が強い人は“見かけ”に注意)

歩行で:終末立脚期の「後ろ脚の残り(TLA)」+骨盤/腰椎の代償量をセットで観察

統合

  • ROM不足が主?(硬さ)
  • 痛み回避が主?(伸展に行く直前で止まる)
  • 出力不足が主?(ROMはあるのに使えない)

この分類ができると、介入優先度(可動域/疼痛/筋機能/歩行学習)が立てやすくなります。[5][9]

おわりに

股関節伸展制限は、終末立脚期の“伸び”を奪い、TLA低下を通じて推進力・歩幅・速度を落としやすい要因です。 その穴埋めとして骨盤前傾や腰椎伸展などの代償が増え、症状や負担部位が拡大することがあります。 まずは「後ろ脚の残り」と「骨盤・腰椎での代償」の2点を押さえると、歩行分析の精度が上がります。

参考文献

[1] Anderson DE, Madigan ML. Healthy older adults have insufficient hip range of motion and plantar flexor strength to walk like healthy young adults. J Biomech. 2014;47(5):1104-1109. PMID: 24461576.

[2] Hsiao HY, Knarr BA, Higginson JS, Binder-Macleod SA. The relative contribution of ankle moment and trailing limb angle to propulsive force during gait. Hum Mov Sci. 2015;39:212-221. PMID: 25498289.

[3] Awad LN, Binder-Macleod SA, Pohlig RT, Reisman DS. Paretic Propulsion and Trailing Limb Angle Are Key Determinants of Long-Distance Walking Function After Stroke. Neurorehabil Neural Repair. 2015;29(6):499-508. PMID: 25385764.

[4] Lewek MD, Sawicki GS. Trailing limb angle is a surrogate for propulsive limb forces during walking post-stroke. Clin Biomech (Bristol). 2019;67:115-118. PMID: 31102839.

[5] Hurwitz DE, Hulet CH, Andriacchi TP, Rosenberg AG, Galante JO. Gait compensations in patients with osteoarthritis of the hip and their relationship to pain and passive hip motion. J Orthop Res. 1997;15(4):629-635. PMID: 9379275.

[6] Franz JR, Paylo KW, Dicharry J, Riley PO, Kerrigan DC. Changes in the coordination of hip and pelvis kinematics with mode of locomotion. Gait Posture. 2009;29(3):494-498. PMID: 19124245.

[7] Levine D, Whittle MW. The effects of pelvic movement on lumbar lordosis in the standing position. J Orthop Sports Phys Ther. 1996;24(3):130-135. PMID: 8866271.

[8] Preece SJ, Tan YF, Alghamdi TDA, Arnall FA. Comparison of Pelvic Tilt Before and After Hip Flexor Stretching in Healthy Adults. J Manipulative Physiol Ther. 2021;44(4):289-294. PMID: 34090549.

[9] Shimada T. Factors affecting appearance patterns of hip-flexion contractures and their effects on postural and gait abnormalities. Kobe J Med Sci. 1996;42(4):271-290. PMID: 9023458.

[10] Schulz BW, Ashton-Miller JA, Alexander NB. Maximum step length: relationships to age and knee and hip extensor capacities. Clin Biomech (Bristol). 2007;22(6):689-696. PMID: 17434245.

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執筆│宇野  編集│てろろぐ 監修│

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