脳卒中、急性期治療、リスク管理|2024.11.22|最終更新:2024.11.22|理学療法士が執筆・監修しています
この記事でわかること
- 脳卒中の急性期治療は迅速かつ適切な対応が重要
- 血栓溶解療法や血管内治療が有効
- Stroke Unitでの治療が予後を改善し、早期のリハビリが機能回復に大きく寄与
序文
脳卒中の急性期治療は、患者の予後を大きく左右する極めて重要な段階です。脳卒中発症後の治療は「時間=脳」という考えに基づき、迅速かつ適切な対応が求められます。特に、急性期の治療選択肢は近年大きく進化しており、血栓溶解療法や血管内治療の有効性が示されています。ここでは、急性期治療における最新のエビデンスに基づいた治療アプローチと、医療現場での実践的な課題について解説します。
脳梗塞に対する急性期治療
血栓溶解療法 (rt-PA療法)
血栓溶解療法は、発症早期に血栓を溶解し、閉塞した血管の再開通を目指す治療法です。日本では、アルテプラーゼ(rt-PA)が承認されており、発症から4.5時間以内に投与することで有効性が確認されています[1]。
適応基準:年齢、発症時間、CTやMRIによる出血の否定、血糖値などの厳密な条件を満たす患者に対してのみ使用が可能です。
治療効果:NIHSSスコアが軽症の患者や中等度の患者で特に有効とされ、発症から1.5時間以内に投与された患者では、完全回復の可能性が大幅に高まることが示されています[2]。
リスク管理:最大のリスクは出血性転換であり、慎重な適応判断とモニタリングが必要です。出血性合併症の発生率は、2.4~6.4%とされています。
血管内治療(機械的血栓回収術)
血管内治療は、血栓が大きい場合やrt-PA療法が適応外である場合に、カテーテルを用いて血栓を物理的に除去する治療法です。特に、近年はステント型血栓回収デバイスの開発により、脳主幹動脈閉塞に対する治療成績が大幅に改善しました[3]。
適応基準:大血管閉塞が確認され、発症から6時間以内の患者が適応となります。ただし、画像所見に基づく脳虚血ペナンブラの評価によって、発症後6~24時間の遅発症例に対する適応も拡大されています[4]。
画像診断による治療戦略の決定
急性期治療の成功には、正確かつ迅速な画像診断が不可欠です。特に、頭部CTやMRI(DWI、PWI)を用いた虚血部位の同定、血流状態の評価が重要です。
CT:脳出血の早期除外に用いられ、また早期虚血変化(early ischemic changes, ASPECTS)を評価します。
MRI:拡散強調画像(DWI)での虚血領域と灌流画像(PWI)の差分(ペナンブラ)を評価することで、rt-PA療法や血管内治療の適応を決定します。
近年では、AI技術を活用した画像解析が実用化されつつあり、迅速かつ精度の高いペナンブラ評価が可能となりつつあります(RAPIDやViz.AIシステムなど)。
脳出血およびくも膜下出血の急性期治療
脳出血の治療戦略
脳出血に対する急性期治療では、出血量と出血部位に基づく適切な血圧管理と、必要に応じた外科的治療が行われます。
血圧管理:脳出血患者では、収縮期血圧を140 mmHg未満に保つことが推奨されています[5]。過度な降圧による脳血流低下のリスクも考慮する必要があるため、慎重なモニタリングが必要です。
外科的介入:小脳出血や大量の被殻出血、脳室内出血などの場合、減圧術や血腫除去術が考慮されます。
くも膜下出血の治療
くも膜下出血の主な原因は動脈瘤破裂であり、早期の外科的介入が必須です。治療法としては、以下の2つが一般的です:
コイル塞栓術:動脈瘤内部にコイルを充填し、再出血を防ぐ方法。発症後早期(48時間以内)に実施することが推奨されています[6]。
開頭クリッピング術:動脈瘤の根部をクリップで閉鎖する手術法。コイル塞栓術が適応とならない場合に行われます。
急性期管理の実践
Stroke Unitの重要性
急性期治療は、専門スタッフが揃ったStroke Unit(脳卒中集中治療室)での対応が推奨されています。Stroke Unitでの治療は、一般病棟での治療に比べて、死亡率および後遺症を低減することが示されています[7]。
Stroke Unitでは、急性期の血圧管理、糖代謝管理、抗凝固療法の適切な導入、早期のリハビリ開始などが包括的に行われます。また、心房細動や心筋梗塞など、合併症の早期診断・治療も行います。
高次脳機能障害の早期評価とリハビリ
脳卒中後の予後を改善するためには、発症後早期の段階で高次脳機能障害や運動機能障害の評価が重要です。NIHSSスコアを用いた神経学的評価や、ADL(日常生活動作)の評価が適切なリハビリプランの構築に不可欠です。急性期から積極的なリハビリ介入が後の機能回復に寄与することが示されています。
おわりに
脳卒中の急性期治療における最も重要な要素は、時間内に適切な治療を施すことです。rt-PA療法や血管内治療の進展により、急性期脳梗塞の予後は飛躍的に改善しています。脳出血やくも膜下出血においても、早期の外科的介入と厳密な血圧管理が予後を左右します。今後も、AI技術を含む新しい治療法の進展が期待される分野です。
参考文献
[1]
Hacke, et al. Thrombolysis with alteplase 3 to 4.5 hours after acute ischemic stroke. N Engl J Med. 2008 Sep 25;359(13):1317-29.
[2]
National Institute of Neurological Disorders and Stroke rt-PA Stroke Study Group. Tissue plasminogen activator for acute ischemic stroke. N Engl J Med. 1995 Dec 14;333(24):1581-7.
[3]
Olthuis, et al. Endovascular treatment versus no endovascular treatment after 6-24 h in patients with ischaemic stroke and collateral flow on CT angiography (MR CLEAN-LATE) in the Netherlands: a multicentre, open-label, blinded-endpoint, randomised, controlled, phase 3 trial. Lancet. 2023 Apr 22;401(10385):1371-1380.
[4]
Albers, et al. Thrombectomy for Stroke at 6 to 16 Hours with Selection by Perfusion Imaging. N Engl J Med. 2018 Feb 22;378(8):708-718.
[5]
Qureshi, et al. Intensive Blood-Pressure Lowering in Patients with Acute Cerebral Hemorrhage. N Engl J Med. 2016 Sep 15;375(11):1033-43.
[6]
Molyneux, et al. International subarachnoid aneurysm trial (ISAT) of neurosurgical clipping versus endovascular coiling in 2143 patients with ruptured intracranial aneurysms: a randomised comparison of effects on survival, dependency, seizures, rebleeding, subgroups, and aneurysm occlusion. Lancet. 2005 Sep;366(9488):809-17.
[7]
Stroke Unit Trialists’ Collaboration. Organised inpatient (stroke unit) care for stroke. Cochrane Database Syst Rev. 2013 Sep 11;2013(9):CD000197.
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執筆│宇野 編集│てろろぐ 監修│幸
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