序文(はじめに)
「日々の業務に追われて、新しいことを学ぶ時間なんてない…」
「後輩に何かを教えなければいけない立場だけど、正直なところ自分も手一杯だ」
「もっと良いリハビリを届けたいのに、職場に学び合う余裕がない…」
小規模な病院やクリニック、訪問看護ステーションで働くセラピストの皆さんの中には、このような葛藤を抱えている方も少なくないのではないでしょうか。教育や人材育成の重要性を感じながらも、目の前の業務に忙殺され、何から手をつければ良いか分からなくなってしまう。そのお気持ち、とてもよく分かります。
しかし、大規模な研修や勉強会だけが学びの場ではありません。この記事では、忙しい毎日の中でも、少しの工夫で職場に「学ぶ空気」をつくりだすための、具体的で実践的な3つの方法をご紹介します。
1. 小さな「問い」を共有することから始める
まとまった勉強会を開くことは、時間的にも人員的にも大きな負担になります。そこでまず試していただきたいことは、日々の業務の中に小さな「問い」を投げかける習慣をつくることです。
例えば、カルテを見ながら同僚に「〇〇さんのこの動き、どう解釈しますか?」と尋ねてみたり、カンファレンスの場で「この目標設定について、皆さんの意見を聞かせてください」と問いかけてみたりする。大切なことは、一人で抱え込まず、些細なことでも周囲に共有することです。
「知らない」と表明することは、決して恥ずかしいことではありません。むしろ、その一言が、他のスタッフが発言しやすくなるきっかけとなり、チーム全体で考える文化の第一歩となります。大掛かりな準備は不要です。まずは、小さな問いかけから始めてみることをお勧めします。
2. 「できたこと」を可視化して自信につなげる
忙しい現場では、つい「できなかったこと」や課題にばかり目が行きがちです。しかし、それだけではスタッフのモチベーションは下がり、挑戦する意欲も削がれてしまいます。
そこで有効なことは、チームの「できたこと」や「小さな成功」を意図的に可視化することです。例えば、ホワイトボードの片隅に「今週のグッドケース」を書き出す、朝礼の最後に「〇〇さんへのアプローチ、工夫したら上手くいきました」といった成功体験を1分で共有する、といった方法です。
新しい手技を試した、難しいご家族とのコミュニケーションが円滑に進んだなど、どんなに小さなことでも構いません。できたことを認め合う文化は、スタッフに自信と安心感を与え、「次も頑張ろう」という前向きなエネルギーを生み出します。その積み重ねが、学びへの意欲を自然に引き出していきます。
3. 5分でできる「情報シャワー」を仕組み化する
新しい知識や技術をインプットしたくても、論文をじっくり読み込んだり、研修動画を長時間視聴したりする時間はなかなか取れないものです。
そこでおすすめしたいことは、ごく短時間で終わる「情報シャワー」を仕組みとして取り入れることです。例えば、週に一度、担当者が5分だけ時間をもらい、「最近読んだ記事の要約」や「外部研修で学んだことのワンポイント共有」などを行います。
一人ひとりの負担は小さくても、チーム全体で継続することで、常に新しい情報に触れる機会が生まれます。この「情報シャワー」が、新たな興味や疑問を引き出すきっかけとなり、職場の知的好奇心を刺激します。仕組み化することにより、無理なく学びを習慣にすることができます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。職場に「学ぶ空気」をつくるために、特別な改革が必要なわけではありません。大切なことは、日常業務の中にある小さなきっかけを活かし、それを継続することです。本日ご紹介した「小さな問いの共有」「できたことの可視化」「5分間の情報シャワー」は、明日からでもすぐに実践できることばかりです。
この記事を読んで「やってみようかな」と感じてくださったなら、ぜひ、まずは一つの行動から起こしてみてください。あなたのその小さな一歩が、職場全体の大きな変化を生み出すきっかけになるはずです。
あなたの行動が、明日からの現場をきっと変えていきます。
参考文献
Rose T. Dunn: Dunn and Haimann’s Healthcare Management, Eleventh Edition


