序文(はじめに)
理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)がチームで新しい取り組みを始める場面は、臨床だけでなく、地域活動や研究、委員会など多岐にわたります。
例えば、「自主トレ指導の新しいマニュアルを作る」「訪問リハの質を高める新体制をつくる」「地域包括ケアのイベントを運営する」といった取り組みは、医療・介護の現場でもよくあるテーマです。
しかし、せっかくの良いプロジェクトでも、準備不足が原因で頓挫することは少なくありません。この記事では、新しいプロジェクトを進める上で欠かせない“準備”の視点を、現場目線で紹介します。
1. 目的とゴールを言葉にする
アジェンダ(議題)を事前に共有する
プロジェクトがうまくいかない理由のひとつは、「目的がぼんやりしていること」です。
まずは、 “なぜこのプロジェクトを始めるのか?”を明確にしておきましょう。
例:
- 目的:退院後の生活支援をより具体的に支援するため
- ゴール:◯月までに患者向けの自主トレーニング冊子を完成させ、配布を始める
このように、言葉にして共有できる状態にしておくことが、ブレない進行の第一歩になります。
合言葉は、「何のため?」「誰のため?」です。
2. 情報整理と見通しを立てる
新しい取り組みでは、必要な情報が点在していることが多く、「調べてみたら既に似たものがあった」「実施には想定以上の手続きが必要だった」といった事態が起こりがちです。
まずは情報の棚卸しから始めましょう。
例:
- 既存のマニュアルや資料はあるか
- 他施設の取り組みで参考になるものはないか
- 法的・制度的な制約があるか:特に報酬制度や医療法に関わる場合
- 予算や時間的な制約はどうか
プロジェクトの全体像を把握して、スケジュールや優先順位を整理していくことが大切です。
3. メンバー選定と役割分担を早めに行う
「誰とやるか」「何を担当してもらうか」を、決めてます。
なんとなく声をかけて進めていくと、最終的に仕事が偏り、「なんで私ばっかり…」という不満につながります。
ポイント:
- 「Aさんにはこの役割をお願いしたい」と明確にする
- 各自の負担や得意分野を考慮する
- 会議や打ち合わせの日程は、別の予定が入る前に決める
関係性が近いからこそ、あえて丁寧に決めることが信頼にもつながります。
4. 小さく始めて、振り返る
大きなことを一気に進めようとすると、途中で手が止まりがちです。
まずは小さく始めて、手応えを確認するステップを入れましょう。
例:
- まずは一人の患者さんに試してみる
- 一部署だけで試行導入してみる
- 試行結果をホワイトボードや掲示板でチーム内に共有する
そして、「どこがうまくいって、どこが課題だったか」を定期的に振り返り、少しずつ改善していく流れをつくることが成功の鍵になります。
まとめ
新しいプロジェクトは、準備次第で結果が大きく変わります。
- 目的とゴールを明確にする
- 情報を整理し、見通しを立てる
- メンバーと役割をはっきりさせる
- 小さく始めて、振り返る
この4つの視点を押さえておくことで、途中で止まらずに、実行力のあるプロジェクトへと育てていくことができます。
現場の力で、より良い仕組みを形にしていきましょう。
参考文献
Rose T. Dunn: Dunn and Haimann’s Healthcare Management, Eleventh Edition