序文(はじめに)
「スタッフのスキルアップのために動画研修サービスを導入したのに、ログイン履歴を見たら誰も見ていない…」
「『いつでも好きな時に見ていいよ』と伝えたけれど、結局、日々の業務に追われて後回しにされている」
せっかく良質な学習ツールを用意しても、それが活用されなければ意味がありません。教育担当として、スタッフの成長を願って導入したはずが、ただの「使われない箱」になってしまっている現状に、無力感や焦りを感じている方も多いのではないでしょうか。
しかし、動画が見られない原因は、スタッフのやる気がないからでも、動画の内容が悪いからでもありません。多くの場合、それは「見るための環境」や「きっかけ」が整っていないことが原因です。この記事では、動画研修を「宝の持ち腐れ」にせず、現場で生きた教材として活用してもらうための3つの工夫をご紹介します。
1.「いつでもいい」をやめ、時間をスケジュールに組み込むこと
動画研修の最大のメリットは「いつでもどこでも見られること」ですが、皮肉なことに、多忙な医療現場において「いつでもいい」は「いつまでもやらない」と同義になりがちです。スタッフは目の前の業務に追われており、自ら学習時間を捻出することは容易ではありません。
そこで重要になることは、個人の自主性に任せるのではなく、チームとして「見る時間」を確保してしまうことです。
例えば、「毎週火曜日の昼休憩後の15分間は動画学習タイム」と決めたり、訪問の移動の空き時間に「この10分で見られる動画」をリストアップして渡したりする。業務時間の中に公式に学習時間を組み込むことは、スタッフに対して「学ぶことも大切な仕事の一つだ」という強力なメッセージとなり、安心して動画を開くきっかけをつくります。
2.「あの患者さんのため」という目的を明確にすること
ただ漫然と「勉強のために動画を見ておいて」と言われても、目的が曖昧では視聴へのモチベーションは上がりません。現場のスタッフが最も関心を持っていることは、教科書的な知識ではなく、「今担当している、あの患者さんをどう良くするか」という切実な課題です。
動画研修を案内する際は、具体的な臨床の場面とリンクさせて提案することをおすすめします。
「〇〇さんの歩行分析で悩んでいたけれど、この動画の3分あたりの解説がヒントになるかもしれない」
「次回のカンファレンスまでに、この動画の介助方法をみんなで確認して、〇〇さんに試してみよう」
このように、動画を見る理由を「学習」から「目の前の患者さんの課題解決」へと変換することは、スタッフが能動的に動画をクリックする最強の動機づけになります。
3.「全部見なくていい」という許可を出すこと
「研修動画=最初から最後までしっかり見なければならない」という真面目な思い込みが、視聴の心理的ハードルを上げていることがあります。特に30分や60分ある動画だと、まとまった時間が取れないからと、開くことさえ躊躇してしまいます。
そこでリーダーがすべきことは、「全部見なくてもいい」「必要なところだけ見ればいい」という許可を出すことです。
「最初の導入部分だけでも面白いよ」
「実技のデモンストレーションがある真ん中の部分だけ見てくれれば十分です」
このようにハードルを極限まで下げることで、スタッフは気楽な気持ちで動画に触れることができます。まずは「動画を開く」という行動の壁を取り払うことが、習慣化への第一歩となります。
おわりに
動画研修が見てもらえない現状を変えるために必要なことは、スタッフの意識を変えることではなく、リーダーである私たちが「見やすい仕掛け」をつくることです。
「時間を確保すること」「患者さんの課題と結びつけること」「ハードルを下げること」。これらは決して難しいことではありません。動画というツールを、現場の武器に変えられるかどうかは、リーダーのちょっとした声かけや工夫次第です。
まずは明日、「この動画のここだけ見てみて」と、ハードルを低くしてスタッフに声をかけてみてはいかがでしょうか。あなたのその小さな働きかけが、現場に「学ぶ文化」を根づかせるきっかけになるはずです。
参考文献
Rose T. Dunn: Dunn and Haimann’s Healthcare Management, Eleventh Edition


