虚弱高齢者(以下、フレイル)は、急速に高齢化が進んでいる日本において、大きな社会問題となっています。
フレイルを進行させ、要介護状態に陥る危険因子として「栄養」があります。
2015年にフランスの研究チームが、フレイルの進行と栄養が関係しているかについてのシステマティックレビューを行っています(こちら)。
9本の論文が含まれましたが、予備的研究であること、サンプルサイズが少ないこと、追跡期間が短いこと、統計的検出力が低いことから、フレイルと栄養の関連についてハッキリしたことは明らかになりませんでした。
今回紹介する論文は、よく分かっていなかった「フレイルと関連している栄養素って何?」という疑問に応えてくれる論文です(こちら)。
スペインの研究チームが、2005年~2017年の期間に発表され、適合基準にマッチした19本の論文を分析しています。
結果として、
微量栄養素の摂取量が低いと、フレイル発症率が高かった。特に、ビタミンA、B群、C、D、E、葉酸、カロテノイドの摂取量がフレイルと関連していた。
タンパク質摂取量が低いと、フレイル発症率は高かった。タンパク質の摂取する方法は何でも良く、総摂取量が重要だった。
食事の質が低いと、フレイル発症率が高かった。
抗酸化機能がある食物の摂取量が少ないと、フレイル発症率が高かった。代表的な物として、緑茶、コーヒー、野菜、果物が挙げられていた。
だそうです。
※食事の質というのは、食事が多様性に富んでるかどうかを表しています。
つまり、食事の質が低いということは、栄養バランスが悪い偏った食事をしているということです。
ただし、含まれている論文の多くは横断研究であり、因果関係については言及できないそうです。また、研究間で測定方法にバラつきがあるため、今後さらなる研究が必要だそうです。
結果をまとめますと、
抗酸化能力がある微量栄養素(ビタミン、カロテノイドなど)、タンパク質の摂取量、食事の質とフレイルは関連している。
ということです。
「摂取量が多くなればフレイルを防げる!」と言いたいところですが、まだ因果関係を明確にできるほど、研究は進んでいないようですね。
巷では「フレイル予防には栄養が大事!」と言っていますが、実はまだよく分かっていないということを認識しておく必要がありますね。