脳卒中患者の半側空間無視は、ADL能力改善の大きな阻害因子となります。
半側空間無視に対しての治療方法は、これまで多くの研究がされています。
2017年にフランスのAzouviらの研究チームは、半側空間無視に対する有効な治療法についてレビューし、有効な治療方法を明確に示すことはできませんでした(こちら)。
今回紹介する論文は、「半側空間無視にはどんな治療方法が良いの?」という疑問に応えてくれる論文です(こちら)。
2019年にスペインのDintén-Fernándezらの研究チームは、2013年1月から2017年3月までの期間に登録されている13本の論文を分析しています。
結果として、
- ボトムアップ的介入は9件あり、アイパッチ、バーチャルリアリティー、視線運動刺激、経頭蓋電気刺激、プリズム順応が含まれていました。
- トップダウン的介入は3件あり、視覚的走査、感覚フィードバック、メンタルプラクティスが含まれていました。
- 9件で、空間無視スケールを改善させる効果が認められた。
- 3件で、能力障害の改善が認められた。
- 3件で、運動機能の改善が認められた。
- 全ての介入方法の推奨レベルは「B」であった。
だそうです。
ただし、研究方法や対象者にバラつきがあるため、さらなる研究が必要だそうです。
結果をまとめますと、
- 半側空間無視に対しては、ボトムアップ的介入とトップダウン的介入は、同じくらい空間無視症状や能力を改善させることができる可能性がある
ということになります。
今回は、半側空間無視全般的に有効性がある治療方法についてでした。
半側空間無視には複数のsub typeがあり、それぞれで責任病巣が少しずつ異なっているらしいのですが、同じ治療方法でもそのtypeごとに少しずつ治療を工夫しなければいけないのではないかと思います。
最適な治療を選択し工夫するためには、脳画像や臨床所見などから推論する能力が重要になってくると思います。