狭心症を始めとした心疾患の患者数は年々増加傾向であり、平成29年の調査では約173万人と推定されています。
運動ベースの心臓リハビリテーション(以下心リハ)は、その有効性が認められてきていますが、まだ明らかになっていない部分もあります。
ヨーロッパのガイドライン(European Society of Cardiology:こちら)では、安定期の狭心症に対する心リハの有効性が示されていますが、国立医療技術評価機構(National Health and Care Excellence:こちら)のガイドラインでは、安定期狭心症に対する心リハの有効性に関する根拠はないと結論付けられています。
今回紹介する論文は、「安定期狭心症に対する運動ベースの心リハは有効なの?」という疑問に応えてくれる論文です(こちら)。
2019年にイギリスのLongらは、2017年10月までの期間に登録されている7本の論文を解析しています。
結果として、
・全ての原因の死亡率、心筋梗塞発生率、健康関連QOL、有害事象、費用対効果に与える効果は不明確であった。
・運動耐容能に対しては、有効性を示した。
だそうです。
ただし、対象者数が少なく、研究間で調査方法にばらつきがあるため、さらなる研究が必要だそうです。
結果をまとめますと、
安定期狭心症に対する心リハは、運動耐容能の改善以外の効果についてはよく分からない、
ということになります。
心リハは、理論的にはあらゆる効果がありそうですが、実際には効果がある場合とない場合がありそうです。
しっかり評価を行い、運動ベースの心リハが有効な患者なのかを見極め、介入する必要があると思います。
どのような患者に運動ベースの心リハが有効なのかについては、今後の研究で明らかになることを期待しています。