脳卒中患者では、運動麻痺や感覚障害などの影響で、バランス能力が低下することが多いです。
2015年にアイルランドのCallalyらが行った調査では、2年間の追跡期間中に脳卒中患者の23.5%が少なくとも1回は転倒を経験していることが報告されています(こちら)。
脳卒中患者のバランス障害に対する理学療法として、キネシオテーピング(KT)の有効性を調査した研究がいくつかされていますが、結果にバラつきがあり、有効性についてはまだ明らかになっていませんでした。
今回紹介する論文は「脳卒中患者のバランス障害にKTは有効なの?」という疑問に応えてくれる論文です(こちら)。
2019年に中国のHuらの研究チームは、2018年12月までに登録された22本の論文を解析しています。
いずれの論文も、KTと従来の治療(CR)を比較しています。
結果として、
・KTはCRと比較して、Berg Balance Scale(MD:4.46)、TUG(MD:-4.46)、Functional Ambulation Category(MD:0.53)、Fugl-Meyer Assessment(MD:4.20)、Modified Ashworth Scale(MD:-0.38)が有意に改善した。
・KTの効果は介入4週間以内では生じず、4週間以上の介入で有意な効果が認められた(MD:4.77)。
だそうです。
ただし、質の高い研究が不足しているため、さらなる研究が必要だそうです。
結果をまとめますと、
・KTによる治療を4週間以上行うことで、CRよりもバランス能力が向上する。
ということになります。
KTは筋骨格系の物理的な固定や誘導、皮膚感覚刺激など様々な効果があり、適用範囲も広く、有用性の高い治療手段です。
特に、脳卒中患者ではリハ時間以外の日常生活の感覚入力を変化させられるため、治療効果が高いと思います。
ランニングコストはかかりますが、費用対効果は高いと思いますので、知識・技術を身に付けておいて損はない治療手段ではないでしょうか。