脳卒中患者の機能訓練として、体幹トレーニングが重要であることは皆さんご存知のことだと思います。
過去にスペインの研究チームが行ったRCTでは、通常の理学療法に毎回15分の体幹トレーニング(背臥位でのブリッジ運動、不安定板上での座位バランス運動、バランスボール上での座位バランス運動)を行うことで、静的および動的バランス能力、歩行能力、ADL能力が向上することが明らかとなっています(こちら)。
しかし、体幹トレーニングの方法、特に安定した条件で行うのと、不安定な条件で行うのとどちらが有効かは、はっきりとはわかっていませんでした。
今回紹介する論文は、「脳卒中患者の体幹トレーニングで効果的な方法は何なの?」という疑問に応えてくれる論文です(こちら)。
ベルギーのアントワープ大学のVan Criekingeらは、2017年4月までの期間に登録された7本のRCT論文を解析しています。
結果として、
- 不安定条件での体幹トレーニングは、安定条件と比較して座位バランス、立位バランス、歩行能力が向上した。
- 有効だった不安定条件は、バランスボール、バランスパッド、エアクッションであり、スリングは有効性が認められなかった。
だそうです。
ただし、含まれている対象者の脳卒中発症からの期間が異なるため、今回の結果を参照するときには注意が必要です。
結果をまとめますと、
- 脳卒中患者のバランス能力向上には、不安定条件での体幹トレーニングが有効(特にバランスボール、バランスパッド、エアクッション)
ということになります。
この論文では上記のような結果になりましたが、脳卒中患者では、発症からの経過だけでなく、運動および感覚障害、高次脳機能障害、精神心理機能異常、併存症など、多くの要因の影響を受けます。
今回は安定性条件の違いでの体幹トレーニングに着目していますが、「そもそも体幹トレーニングじゃなければいけないのか?」といった考えも出てきますね。