脳卒中患者では、筋緊張異常による拘縮が問題となることは少なくありません。
拘縮に対してストレッチングが一つの治療戦略として考えられますが、ストレッチングは関節可動域や痛み、活動、生活の質に対して効果は認められませんでした(こちら)
しかし、ストレッチングを行うことで筋肉の構造的あるいは機械的特性がどう変化しているかについては明らかとなっていませんでした。
今回紹介する論文は「脳卒中患者の拘縮筋へのストレッチングで、筋肉はどう変化するの?」という疑問に応えてくれる論文です(こちら)。
2020年にフランスのLecharteらの研究チームは、2019年8月までに登録されている8本の論文が解析されています。
結果として、
関節トルクに対しては、効果は認められなかった。
筋束の長さ、筋厚に対しては、52週間以上介入すると足関節底屈筋で効果が認められた。
だそうです。
ただし、研究方法や対象者にバラつきがあり、対象者数も少ないため、さらなる研究が必要だそうです。
結果をまとめますと、
脳卒中患者の拘縮に対して、ストレッチングは52週間以上行うと筋束の長さや筋厚を変化させる。
ということになります。
拘縮がある脳卒中患者に対するストレッチングは、関節可動域など機能的な改善は望めなくても、筋の状態を変化させることができるというのは大切なことではないかと思います。
慢性期になると拘縮筋に対する介入に意味があるのかと疑問に感じている人も少なくないようですが、筋自体を変化させられますし、改善できなくても進行は予防できるので、拘縮筋に対してはストレッチングを行う意義はあると思います。