脳卒中患者の運動機能を高めるのに、様々な方法がその有効性を認められるようになってきています。
その中でも、自転車運動は左右交互のリズミカルな下肢の動き、下肢を動かしている際に身体を固定する体幹の安定性および上肢の支持性、心肺機能の向上など、多くの利益をもたらしてくれます。
American Heart AssociationとAmerican Stroke Associationが共同で出した、脳卒中罹患者の運動に関するステートメントでも、自転車運動の有効性が認められています(こちら)。
しかし、自転車運動が歩行やバランスなど能力面に与える効果については、不明な点が多くありました。
今回紹介する論文は、「脳卒中患者の身体機能に自転車運動は効果があるの?」という疑問に応えてくれる論文です(こちら)。
2019年にイランのShariatらの研究チームは、2018年までに登録されている14本の論文を解析しています。
結果として、
- 自転車運動は6分間歩行(SMD:0.41)、10m歩行(SMD:0.3)、Berg Balance Scale(SMD:0.32)の試験結果を、対照群と比較して向上した。
- 自転車に機能的電気刺激(FES)を併用すると、バランス能力(SMD:1.48)が対照群と比較して向上した。
だそうです。
ただし、対象者数がまだ少ないことや、研究間で方法に違いがあることから、さらなる研究が必要だそうです。
結果をまとめますと、
- 自転車運動は歩行能力、バランス能力を向上させる。
- 特に、バランス能力向上にはFESを併用した方が良い。
ということになります。
自転車運動は座位で行えるので転倒リスクは低いですし、負荷を細かく調整して呼吸循環系への負担を軽くできるので、自主訓練としても有用だと思います。
脳卒中後の身体機能の改善には、身体活動量をいかに高めるかが重要だとも言われています。
自転車運動を有効活用していくことが、脳卒中患者の早期機能改善につながるかもしれませんね。