変形性膝関節症(膝OA)の重症度を決める手段として、レントゲン画像が用いられますが、画像所見と実際の臨床症状が一致するかどうかについては議論があるところです。
2009年にイギリスのBedsonらが行った調査では、レントゲン画像で膝OAがある人で膝痛がある人の割合は15~81%と報告されています(こちら)。
しかし、レントゲン画像での膝OA重症度と人工膝関節全置換術(TKA)の術後予後の関連性については明らかになっていませんでした。
今回紹介する論文は「膝OAのレントゲン重症度とTKA術後の予後は関連しているの?」という疑問に応えてくれる論文です(こちら)。
2019年にオーストラリアのYouldenらの研究チームは、2017年9月までの期間に登録されている20本の論文を解析しています。
レントゲン画像所見での重症度はKellgren and Lawrence分類が用いられています。
結果として、
- grade 4の最重度膝OAは、grade 3以下の膝OAと比較して、TKA術後疼痛を減少させた(SMD:-0.25)。
- grade 4の最重度膝OAは、grade 3以下の膝OAと比較して、TKA術後の機能予後を改善させた(MD:0.17)。
だそうです。
ただし、対象者にバラつきがあり、対象者数も少ないため、さらなる研究が必要だそうです。
結果をまとめますと、
- 最重度の膝OAは、そうでない膝OAと比較して、TKAをすることで痛みと機能予後が改善する。
ということになります。
統計学的には有意差は出ていますが、差は小さく、解析に含まれている論文の中には重症度は関係ないという論文も複数含まれています。
実際の臨床場面でも、術前画像所見と術後の症状や機能がミスマッチする場面は少なくありません。
今回の結果はあくまで参考程度にして、画像所見以外の評価結果も含めて予後予測をする必要があると思います。