下肢に神経症状が出る馬尾症候群がある場合、MRIによる画像所見で診断されることは少なくないのではないでしょうか。
しかし、MRIによる診断に対しては、否定的な意見も少なくありません。
2011年にイギリスのFairbankらの研究チームは、臨床所見とMRIの結果の一致度を調査し、MRIで馬尾症候群と診断された人の中で実際に症状があった人は14~48%と報告しています(こちら)。
しかし、この調査で含まれていた研究は小規模な研究ものが多く、より正確に感度、特異度を求めるためには、より多くの研究が必要でした。
今回紹介する論文は、さらに研究数を増やし、「馬尾症候群の診断にMRIは有効か?」という疑問に応えてくれる論文です(こちら)。
2019年にカナダのNathalieらの研究チームは、2018年1月までに登録されていた7本の論文を解析しています。
結果として、
- 肛門括約筋の筋緊張低下、一側の下肢痛、腰痛、サドル麻痺、尿閉、尿失禁、便失禁が、馬尾症候群の主要症状として含まれていた。
- 感度は、肛門括約筋の筋緊張低下:0.3、一側の下肢痛:0.43、腰痛:0.34、サドル麻痺:0.3、尿閉:0.25、尿失禁:0.24、便失禁:0.19であった。
- 特異度は、肛門括約筋の筋緊張低下:0.83、一側の下肢痛:0.67、腰痛:0.62、サドル麻痺:0.89、尿閉:0.70、尿失禁:0.72、便失禁:0.86であった。
だそうです。
ただし、まだ対象者数が少ないため、今後更なる研究が必要だそうです。
結果とまとめますと、
- 馬尾症候群に対するMRI検査は、特異度は高いが感度は低い
ということになります。
腰痛に対して画像診断をするのは、重篤な臨床所見(red flag)がある時に限るべきとガイドラインでも推奨されています。
よく画像だけで馬尾症候群や椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症などを診断される場合がありますが、まず臨床症状を確認し、重篤な病変がないかどうかを画像で確認するという流れが作れると、画像所見だけで誤った診断をつけられることも少なくなるのではないかと思います。