高齢者では精神機能が不安定になりやすく、「老年期うつ病」と呼ばれています。
2017年にスウェーデンのSjöbergらが行った調査では、高齢者の約10%にうつ症状を認め、うつ症状は身体機能低下と関連していたことが報告されています(こちら)。
しかし、うつ症状が高齢者で問題となっている「フレイル」と関連しているかについては、まだ明らかになっていませんでした。
今回紹介する論文は、「高齢者のうつ症状はフレイルのリスク因子なの?」という疑問に応えてくれる論文です(こちら)。
2019年に台湾のChuらの研究チームは、2000年から2016年に期間に登録された14本の論文を解析しています。
結果として、
- うつ症状はフレイルリスクと有意に関連していた(オッズ比:2.99)。
- うつ症状によるフレイルリスクは、女性よりも男性の方が有意に高かった(オッズ比:2.25対4.76)。
- 研究デザイン、地域、うつ症状の診断基準、共変量、フレイルの診断基準は、うつ症状とフレイルとの関連性に影響していなかった。
だそうです。
しかし、統計解析の方法や研究のフォロー期間が異なる点があったため、更なる研究が必要だそうです。
結果をまとめますと、
- うつ症状は、どの条件下でもフレイルリスクが高い。
ということになります。
フレイルは身体的、精神心理的、社会的の3つのカテゴリーに分類できると言われています。
精神心理的フレイル、社会的フレイルともに、身体的フレイルのリスク因子であることは、今回の研究を含め、複数の研究で明らかになっています。
身体的フレイルの上流に精神心理的フレイルや社会的フレイルがあるという報告もあるので、フレイル対策には、精神心理的、社会的な対策が必要かもしれません。