血圧値は、年齢を重ねるごとに上昇していきますが、高齢者では低下することが報告されています(こちら)。
血圧値の低下は、転倒リスクや認知機能の低下、死亡リスクと関連しており、予後不良因子となり得ます。
また、最近では高齢者のフレイルが問題視されており、フレイルは転倒や疾患発症、死亡リスクを増加させます。
しかし、高齢者の血圧値がフレイルの有無で予後に与える影響が異なるかについては明らかになっていませんでした。
今回紹介する論文は「高齢者の血圧値はフレイルの有無で影響が異なるか?」という疑問に応えてくれる論文です(こちら)。
2019年にイギリスのToddらの研究チームは、2000年1月から2018年6月までの期間に登録された9本の論文を解析しています。
収縮期血圧は140mmHg、拡張期血圧は90mmHgを境に比較しています。
結果として、
- フレイルがある場合、収縮期血圧140mmHg以上の群とそれ未満の群では、死亡率に差はなかった。
- フレイルがない場合、収縮期血圧140mmHg以上の群はそれ未満の群よりも死亡率が高かった。
- 拡張期血圧では、フレイルの有無に関わらず、拡張期血圧90mmHgを境に死亡率に差は認められなかった。
だそうです。
ただし、調査方法にバラつきがあるため、更なる研究が必要だそうです。
結果をまとめますと、
- フレイル高齢者では血圧値が死亡率に影響を与えることはないが、フレイルでない高齢者では、収縮期血圧140mmHgを超えると死亡率が上がる。
ということになります。
フレイル高齢者では血圧値が死亡率に関連しないというのは興味深いですね。
フレイルでは、全身の機能不全が生じている可能性があり、血圧値以外の予後不良因子が多いことが、今回の結果に関係している可能性がありそうですね。
今回の結果になった原因の解明など、今後の研究に期待です。