高齢者では食欲不振を訴える割合が増え、「anorexia of aging」と言われています。
高齢者の食欲不振の原因の一つとして、食欲促進ホルモン(グレリン)が減少し、食欲減退ホルモン(CCK、PYY)が増加することが考えられています(こちら)。
しかし、実際に食欲関連ホルモンが若年者と比較してどのように変化しているかについては明らかになっていませんでした。
今回紹介する論文は「高齢者の食欲ホルモンはどのように変化しているの?」という疑問に応えてくれる論文です(こちら)。
2019年にイギリスのJohnsonらの研究チームは、2018年6月までに登録されている35本の論文を解析しています。
結果として、
グレリン(食欲促進系)は、空腹時、食後ともに、高齢者と若年者間で有意差はなかった。
CCK(食欲減退系)は、空腹時(SMD:0.41)、食後(SMD:0.41)ともに、高齢者の方が高値だった。
GLP-1(食欲減退系)は、空腹時、食後ともに、高齢者と若年者間で有意差はなかった。
レプチン(食欲減退系)は、空腹時(SMD:1.23)、食後(SMD:0.62)ともに、高齢者の方が高値であった。
インスリン(食欲減退系)は、空腹時には差はなかったが、食後(SMD:0.16)は高齢者の方が高値だった。
PYY(食欲減退系)は、空腹時、食後ともに高齢者と若年者間で有意差はなかった。
GIP(食欲減退系)は、空腹時、食後ともに高齢者と若年者間で有意差はなかった。
エネルギー摂取量は、高齢者の方がより少なかった(SMD:-0.98)
空腹スコアは、空腹時(SMD:-1.0)には高齢者の方が減少していたが、食後では高齢者と若年者で差はなかった。
だそうです。
ただし、研究間で調査方法にバラつきがあるため、さらなる研究が必要だそうです。
結果をまとめますと、
高齢者は若年者と比較して、食欲減退ホルモン(CCK、レプチン、インスリン)が増加しており、エネルギー摂取量が少なかった。
ということになります。
食欲関連ホルモンは、運動時にも変化を示すことが報告されています。
理学療法を通して食欲関連ホルモンを変化させるような介入方法が、今後研究が進むことで明らかになるかもしれません。