はじめに
高齢者の転倒は要介護のリスク因子であり、要介護の主な原因の12%を「骨折・転倒」が占めています[1]。
地域在住高齢者の転倒の危険因子には、転倒歴、歩行障害、めまい、歩行補助具の使用、パーキンソン病、抗てんかん薬と、多岐に渡る因子が関連していることが報告されています[2]。
転倒・骨折予防のための介入方法については、先行研究で様々な介入方法が検討されていますが、どのような介入が有効なのかについては明らかになっていませんでした。
今回紹介する論文は「地域高齢者の転倒・骨折予防に有効な介入は?」という疑問に応えてくれる論文です[3]。
研究概要
2021年にオランダのDautzenbergらの研究チームは2019年2月までの登録されている192本の論文を解析。
対象
対象者:65-74歳(30.9%)、75-84歳(58.2%)、85歳以上(5%)。
対象国:ヨーロッパ(39.5%)、オーストラリア/ニュージーランド(22.3%)、北米(21.8%)、アジア(13.2%)、南米(2.3%)。
結果
転倒者数の減少効果あり
- 歩行補助具の提供などの支援テクノロジーと薬剤の見直しなどの転倒リスク評価の組み合わせ。
- 支援テクノロジーと患者教育などの質向上計画の組み合わせ。
- 立位での全身振動マシントレーニングによる筋力、バランス能力強化。
- 住宅改修、支援テクノロジー、質向上計画、起立性低血圧の管理、標準的な転倒リスク評価の組み合わせ。
転倒関連骨折の減少効果あり
- 転倒リスク評価。
- 運動。
ただし、評価方法や介入内容にバラつきがあるため、更なる研究が必要と述べられています。
まとめ
今回の結果では、転倒者数の減少には多要素の介入が良さそうです。
一方、転倒関連骨折に関してはまだ一部の介入でしか調査がされていないようです。
今後種々の介入による調査が行われ、有効な介入方法が明らかになっていくことを期待しています。
参考文献
[1]厚生労働省. 国民生活基礎調査の概況 2019年。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/index.html.
[2] Deandrea, et al. Epidemiology. 2010 Sep;21(5):658-68.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20585256/.
[3] Dautzenberg, et al. J Am Geriatr Soc. 2021 Oct;69(10):2973-2984.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34318929/.