慢性筋骨格系疼痛は、一般集団の11.4~24%に存在すると言われており(こちら)、身体機能や日常生活だけでなく、恐怖や不安、疼痛回避行動など精神心理面にも影響を与えています(こちら)。
慢性筋骨格系疼痛の精神心理面に対する介入については、様々な調査がされていますが、徒手療法の効果についてはまだ明らかになっていませんでした。
今回紹介する論文は「慢性疼痛の精神心理面に徒手療法は効果あるの?」という疑問に応えてくれる論文です(こちら)。
2020年にブラジルのKamonsekiらの研究チームは、2020年3月までに登録されている11本の論文を解析しています。
結果として、
疼痛回避行動に対しては、無治療と比較した時、短期および中期ともに徒手療法の効果は認められなかった。
他の治療法と比較した場合には、徒手療法の短期的な効果に差はなかった。
運動恐怖に対しては、他の治療法と比較した時、徒手療法の効果は認められなかった。
破局的思考に対しては、他の治療法と比較した時、徒手療法の効果は認められなかった。
だそうです。
ただし、対象者数が少なく、研究の質が低いため、さらなる研究が必要だそうです。
理学療法士は、「痛み」というと、徒手で何とかしたいと思ってしまう人が少なくないと思います。
しかし、慢性疼痛は末梢の問題だけでなく、中枢の問題も大きく関係しているので、徒手療法だけでなくマインドフルネスや認知行動療法など精神心理的アプローチを併用することが大切だと思います。