嚥下障害は世界的な課題であり、全人口の8%が嚥下障害を患っていると言われています(こちら)。
嚥下障害があると低栄養になりやすいが、75.4%の患者が食形態やとろみの調整など適切なケアを受けていない可能性があることが報告されています(こちら)。
嚥下障害患者に対しての介入方法の一つとして、食形態の調整があります。
しかし、調整された食形態は加工段階で栄養密度が低下し、QOLが低下する可能性が考えられていますが、その関連性は明らかになっていませんでした(こちら)。
今回紹介する論文は「調整された食形態は栄養状態や食事の満足度と関連するの?」という疑問に応えてくれる論文です(こちら)。
2021年にニュージーランドのWuらの研究チームは、2021年4月までに登録された26本の論文を解析しています。
結果として、
調査対象は病院(n = 11)、長期介護施設(n = 11)、両者の組み合わせ(n = 2)、地域(n = 2)だった。
栄養評価にはMNAまたはMNA-SFが用いられていた。
食形態については、各国で表現の仕方にバラつきがされていましたが、ピューレ状の形態が最も用いられていた。
従来の調整された食形態は、栄養状態を評価している全ての調査で低栄養や体重減少と関連しており、低栄養の有病率は18.4%~59%だった。
しかし、改良された物や成型された物、個別的に調整された物は栄養状態を改善させるという報告もみられた。
食事の満足度は、通常のピューレ状の食事では低下するが、成型された物では満足度が高くなった。
だそうです。
ただし、評価表法や対象者にバラつきがあり、研究の質も低かったため、さらなる研究が必要だそうです。
嚥下調整食は栄養密度が低いため、全量摂取しているからといって必要量が満たされていない可能性を考慮する必要があるかもしれません。
また、食べる楽しみを失ってしまう可能性もあるので、嚥下障害があるから仕方がないと考えるのではなく、どうすれば食べる楽しみを維持できるかを検討することも必要かもしれません。