心臓弁膜症は年齢とともに増加する疾患で、有病率は18~44歳では0.7%ですが、75歳以上では13.3%という報告もあります(こちら)。
症候性の心臓弁膜症患者では、保存的治療では死亡率が高く、手術を行ってもQOLが低下すると言われています(こちら)。
運動ベースの心臓リハビリテーションは、心筋梗塞や心臓術後、心不全患者などで死亡率を減少させる効果がみとめられています(こちら)。
しかし、心臓弁膜症術後患者に対しての心臓リハビリテーションの有効性についてはまだ明らかになっていませんでした。
今回紹介する論文は「心臓弁膜症術後患者に運動ベースの心臓リハビリテーションは効果があるの?」という疑問に応えてくれる論文です(こちら)。
2021年にイギリスのAbrahamらの研究チームは、2020年5月までに登録されている6本の論文を解析しています。
結果として、
死亡率に対しては、運動の有効性は明らかにならなかった。
運動介入群では、割合は少ないが、心筋梗塞、心不全、心嚢液貯留、胸水貯留などの合併症が生じていた。
身体機能に対しては、介入によって運動耐容能の改善が認められた。
復職に対しては、介入によって復職率の改善が認められた。
だそうです。
ただし、対象者が一定しておらず、調査方法にバラつきがあるため、さらなる研究が必要だそうです。
心臓弁膜症は、心臓リハビリテーションの中でも比較的多く目にする疾患だと感じていますが、運動ベースの心臓リハビリテーションの有効性と安全性については、まだデータが十分ではないようです。
心臓弁膜症は高齢者に多い疾患でもあるので、フレイルや併存症、背景因子も考慮して心臓リハビリテーションを進めていく必要があるかもしれません。