慢性腰痛は社会的な問題となっており、腰痛にかかる医療費が医療費全体の6.1%というデータもあります(こちら)。
慢性腰痛の治療法として、NSAIDsの有効性が認められていますが、長期間服用することで、心疾患などの有害事象リスクが高くなります(こちら)。
慢性腰痛に対しては、徒手的な治療法として筋膜リリースの有効性に関していくつかの報告がありますが、結果にバラつきがあり、有効性については明らかになっていませんでした。
今回紹介する論文は「慢性腰痛に筋膜リリースは有効なの?」という疑問に応えてくれる論文です(こちら)。
2021年に中国のWuらの研究チームは、2021年4月までに登録されている8本の論文を解析しています。
結果として、
痛みに関しては、対照群と比較すると、有意な改善が認められた(SMD=-0.37)。
筋膜リリース+脊椎マニピュレーションと脊椎マニピュレーションのみを比較した時、筋膜リリース群で有意な改善が認められた(SMD=-0.09)。
筋膜リリース+運動療法と運動療法のみを比較した時、有意な改善は認められなかった。
筋膜リリースと運動療法を比較した時、有意な改善は認められなかった。
身体機能に関しては、対照群と比較すると、有意な改善が認められた(SMD=-0.43)。
筋膜リリース+脊椎マニピュレーションと脊椎マニピュレーションのみを比較した時、有意な改善は認められなかった。
筋膜リリース+運動療法と運動療法のみを比較した時、有意な改善は認められなかった。
QOLに関しては、対照群と比較すると、有意な改善は認められなかった。
バランス能力に関しては、対照群と比較すると、有意な改善は認められなかった。
痛みの圧力閾値に関しては、対照群と比較すると、有意な改善は認められなかった。
体幹可動性に関しては、対照群と比較すると、有意な改善は認められなかった。
メンタルヘルスに関しては、対照群と比較すると、有意な改善は認められなかった。
だそうです。
ただし、論文の質は十分に高くなく、数も少ないため、さらなる研究が必要だそうです。
現時点では、慢性腰痛患者さんに対しての筋膜リリースは、痛みや身体機能の改善に有効そうですね。
ただ、慢性腰痛で課題となるQOLや心理社会的側面に対しての有効性については、研究数が少ないこともあり、まだ明確になっていないので、今後さらなる研究の発展に期待ですね。